政策科学
早稲田大学社会科学部
高橋洋輔ホームページ
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テーマ 「現代の教育問題について」
ケース 「東京都における人事考課制度から考える」
1、研究動機
自分の家庭は両親が教師であり、兄も教員を目指していたという教育家庭なので教育や教育制度に関する現実、問題点などを耳にすることが一般的な人よりも多い。
最近では、国全体で完全学校週5日制等のゆとり教育の導入、中高一貫教育の推進、国立大学等の法人化、学校選択の自由化など、さまざまな教育改革に取り組んでいる。
教育制度を研究することによってこれからの教育のあるべき姿や現代の少子化、新しい教育制度を考えられるのではないかと思ったからである
。
現在、指導力不足の教員が叫ばれる中、もはや形骸化してしまった勤務評定制度を全国的に先駆けて見直し、目標管理に基づく業績評価の導入を果たした新しい教職員評価制度「人事考課制度」(東京都によって導入)について研究してみたいと思う。
目次(予定)
1,研究動機,目次 |
2,現在の教育問題について |
3,東京都における人事考課制度の導入 |
4,人事考課制度の概要、特徴について |
5,人事考課制度の現状と意義,狙い |
6,教員評価制度への国の対応 |
7,現今の研修制度について (@10年経験者研修、Aキャリアプラン研修制度を考える) |
8,人事考課制度の運営上の課題と改善 |
9,諸外国における教員評価制度 |
10,今後の教育制度について |
2、現在の教育問題について
学校教育が直面している教育問題として今日、家庭や地域の教育力の低下、いじめ、不登校、「学級崩壊」などが取りざたされる。そのなかでも最近、新聞やテレビなどで「指導力不足教員」という文字が多く見られる。具体的な内容としては、基礎的な知識、技術不足で、算数の計算問題や漢字などで間違いを教える。児童の要求を聞き入れすぎて振り回されている。自分の価値観と感情のみを優先させて児童と接する。生徒の目を見て話すことができない。保護者の意見も聞かず、校長の指示にも従わない。授業中、生徒の方を見ない。生徒全員が教室を抜け出しても、淡々と授業を続けた。など、が挙げられる。都道府県と政令指定都市の教育委員会が2002年度に「指導力不足」と認定した公立の小中高校の教員は289人となり、前年度の149人からほぼ倍増した。子どもと会話できなかったり、一方的な授業をしたりする指導力不足の教員は、学級崩壊の広がりに伴い問題化してきた。教えるプロとして、教員の資質能力の低下が一部で進んでいるのが現状である。
そこで文科省は2000年以降、各教育委員会に対し指導力を判定する「人事管理システム」づくりを求めてきた。システムの整備が進み、指導力不足と認定される教員も増えている形である。
このような状況に適切に対応していくためには、直接児童生徒の教育に携わる教員の役割が極めて重要であり、教員の意識改革と資質能力の向上が強く求められている。このため、学校組織の活性化を図るとともに、能力と業績に応じた人事管理を通じて、教員一人ひとりの特性や経験に即した人材育成を図っていく必要があると考える。このような教育問題がある中、今日、教育職員の能力開発・人材育成に資する「人事考課制度」が導入された。果たしてこの制度は今後の教育についてどのように作用していくのだろうか・・・。
もちろんこれまで教師への評価制度がなかったわけではない。もうすでに形骸化されてしまったといわれるいわゆる「勤務評定制度」がそれである。この勤務評定制度はスタートにあたって全国的に大きな波紋を呼んだ。それは1957年から61年にかけて、当時の文部省と日教組の間でいわゆる勤評闘争と呼ばれる激しい争いである。公立学校の教職員の勤務評定については、地方公務員法第40条第1項に「任命権者は、職員の執務について定期的に勤務成績の評定を行い、その評定の結果に応じた措置を講じなければならない」と規定されている。これを受けて56年に制定された地方教育行政法第46条では、県費負担教職員の勤務評定は任命権者である都道府県教委が計画し、服務監督権者である市町村教委が実施することに。これが公立学校教員の勤務評定の法的根拠である。
現行の勤務評定制度の問題点として
適正な人事管理を実施するための基礎資料とするという人事管理の観点からの目的に加え、自己啓発・人材育成など新しい目的を果たしていく必要があるが、現行の勤務評定制度にはその機能が十分とはいえない。
学校における教育活動は教員の組織が一体となって取り組む必要がある。しかし、現行の勤務評定制度には、教員組織の一員として努力する教員を評価するという観点が不十分である。
人事評価制度を教員の資質や能力の向上に資するよう機能させるためには、評価する側、評価される側双方に、制度に関する共通の理解がなければならない。しかし、現行の勤務評定制度については、こうした共通の理解が十分成立しているとはいいがたい。
このように、この勤務評定制度はいわゆるなし崩しに近い状況になり、「年功序列」を助長する一律平等主義に大きく傾くものになった。当然評定結果が教師一人一人のものとして還元されることは一切なかったといってよい。
3、東京都における人事考課制度の導入
東京都では2000年度から新しい教員評価制度(人事考課制度)の導入に踏み切ってから、もう5年目にはいる。これからの時代に求められる教職員の評価制度を理解するためには、全国に先駆けて対応した東京都の動きを見過ごして考えることはできない。もはや形骸化してしまった勤務評定制度を全国に先駆けて見直し、教職員の給与と人事異動、昇進などに反映される一般企業の人事考課制度を参考にしながら、目標管理に基づく業績評価の導入を果たした東京都の取組は、全国的な関心を集めている。
4、人事考課制度の概要・特徴について
この制度の特徴とは・・・・
@ 教師の能力開発型の人事考課制度
教職員一人一人が自分の目標を設定して記入する「自己申告書」と、その内容に即して教頭を第一次評定者とする「業績評価」を連動させた点において画期的である。この点については、平成11年度12月の東京都の「教育等人事考課制度導入に関する検討委員会」の報告書の中で次のように位置づけられている。
「(略)能力開発型の人事考課制度は、教職員が校長・教頭との面接を通じて自己目標を設定し、目標に対する成果等の自己評価を行う自己申告制度と教職員の職務遂行の成果やその課程における努力などを評価する業績評価制度を柱とする。自己申告制度を導入する事により、評価が双方向的な仕組みで行われる事になる。・・・」東京都の制度は、管理職によって教師の日頃の努力と成果を十分に見届ける評価を目指しているところが第一の特徴である。
A 取組のプロセスを重視する制度
さきの報告書にも記載されている通り、「教職員の職務遂行の成果や課程における努力」に直目すると、ここでも評価結果を教職員に還元させようとする意図が込められていることが理解できる。
当然のことながら、評価者である教育管理職は教職員の取組に腕を組んで見届けてさえいればよいというわけではない。あくまでも教職員が前向きに取り組めるように、そのプロセスにおいて指導・助言し、具体的なサポートをする事も重要な柱としているのである。このことがなければ、評価者は単なる評定者に過ぎず、指導者として彼らの能力開発に繋いでいくことはできないというべきであろう。
B 職務行動に基づいた、評価の客観性の確保
教職員の学校内での、どのような職務を、どのような視点で、どのように、合理的に判断しながら評価を実施するかという点にある。つまり評価に一定の精度を持って客観性を確保することは、人事考課制度の根幹をなす重要な柱となるはずである。東京都の制度では「学習指導」「生活指導・進路指導」「学校運営」「特別活動・その他」の分野別にそれぞれ「情意」「能力」「実績」を評価要素として実施するシステムとなっている
。さらに評価の誤差ができるだけ生じないようにこれらの要素別にさらに詳細な着眼点が設定されている。このように、東京都の人事考課制度は、できるだけ職務行動に表れた具体的な事実に基づいて客観的な評価結果が得られるように条件が設定されている。
5、人事考課制度の現状と意義・狙い
6、教員評価制度への国の対応
7、現今の研修制度について
(@
10年経験者研修、Aキャリアプラン研修制度)
8、人事考課制度の運営上の課題、問題点について