少年院での教育・出院後のサポートシステムについて
このホームページは、早稲田大学社会科学部上沼ゼミ生の岩崎亜未のものです。
Last Update 08/07/08
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はじめに
「少年院での教育《とは、主に犯罪を犯した少年たちの心理面での更生を目的としたものです。しかし、そのような教育の過程で、人間の考え方なんてそんな簡単に変化するものなのでしょうか。
犯罪を犯す前と、周りの環境(家族や友達etc)が変わらなければ、また同じ結果にならないでしょうか。
事実、日本における青少年の再犯率は約2割という数字がでています。これは外国に比べると少なく、また「意外と少ない《と思う人も多いと思います。
しかし、私は「更生《=「ただ犯罪を犯さなくなる《ということだけではなく、自立して社会へ出て行くこと、つまり、安定した職に就くことや良い人間関係を築くことももちろん含まれると思っています。
メディアによって、青少年による犯罪の増加、凶悪化が大々的に報じられている今、犯罪自体を減らすことも重要ですが、私としては、いかにして一度道を踏み外してしまった少年たちが心を改め、またそれらの更生した少年たちを受け入れる社会を作り上げていくことができるかついて注目すべきではないかと考えています。
これらの問題について、今どのような体制が整っているのか、何が必要とされているのかを考えながら、最終的に自分自身で新たな政策を提言したいと思います。
プレゼン☆2007年7月ゼミ合宿@菅平
ゼミ合宿での発表@伊豆
『犯罪者の更生と犯罪対策』
犯罪を犯す原因は、犯人の育ってきた環境などによって形成された複雑な深層心理が関係してくるものであり、特定するのは非常に困難なことが多い。
よって更生させるのは厳しい。それなら犯罪者を徹底的に隔離し無害化するのはどうか。つまり、刑期を最大限にする、仮釈放の可能性を最小限にとどめるといったものである。
この「治療より隔離を《の考え方は、アメリカの犯罪対策の基になっているものである。アメリカでは、犯罪者の人権より、安全や社会防衛を一番に考えた対策がなされている。
例えば、性犯罪者に薬物去勢の刑罰を課したり、本人の写真や住所をネット上で一般公開することが含まれる。
つまり、犯罪者は更生の対象として扱われるのではなく、強制的に無害化されるのである。
アメリカではこの対策によって、犯罪率・再犯率ともに減少した。
一方、日本の犯罪対策はどうか。日本では、囚人一人当たり毎月28万円が費やされている。受刑者には、栄養計算のされた食事、考え抜かれた教育プログラム、出所後のための職業訓練などが施される。
犯罪者の更生を一番に考え、彼らが立ち直ることで犯罪も減少するという考えに基づいている。
まさに犯罪者にとっては、好都合な社会かもしれない。
しかし、犯罪被害者の人権が無視されがちということが問題となる。特に、賠償金についていえば、全額返済されることはほとんどないという。
そこで、今回提案するのは「フェンスの中の工場論《だ。これは米国連邦最高裁の元長官W・E・バーガーが提唱したもので、刑務所内に工場を作って囚人を雇い入れ、安価な製品を市場に流す「民営刑務所《である。
重要なのは、囚人の賃金のいくらかを被害者への賠償金にあてるということである。
このように、犯罪者の更生にあてる予算を減らし、むしろ被害者に目を向けるべきではないか。
しかし、ここで問題となるのが、犯罪者すべてを更生の可能性ゼロとみなしてよいのだろうか、といった点である。
私自身、最初の研究動機は、一度道を踏み外してしまった人たちにセカンドチャンスを与えて、再び充実した幸せな生活を送ってほしいというものだったので、犯罪者を100%見捨ててしまうような政策にはもちろん賛成できない。
参考文献:
中嶋 博行(2007)『この国が忘れていた正義』(文春新書)
プレゼン☆2007年10月ゼミ合宿@伊豆
意見・アドバイス
- この点についてのアメリカでの議論はないのか
- 犯罪の種類によって更生の方法も違ってくるのではないか(日本とアメリカで比較する)
- 犯罪者更生に携わっているボランティア団体の活動を調べてみるのはどうか
- アメリカの刑法(=積み上げ方式)と日本の刑法が違うのはなぜか調べてみるのはどうか
- 日本初の民営刑務所「美弥社会復帰福祉センター《とアメリカの民営刑務所の運営方針は違うはず。比べてみてはどうか
- 日本の犯罪加害者支援対策についての調べが甘い
- 加害者の代わりに、国が被害者に賠償金を払う制度などはないのか
- アメリカの制度をそのまま日本にもってくるのは無理がある
- 「更生させるのは無理《などの極論にふれるのではなく、中間をとるような自分らしい政策を打ち出すのがよい
- NPOやイギリスのKids Companyの活動を参考にして政策を考えられないか
- どういう取り組みがなされているのか、どういう取り組みが必要なのかをしっかり考えるべき
KIDS COMPANYの活動@イギリス
卒論発表会での発表
『Amityの紹介』
効果的な犯罪者更生教育ということで、今回の発表では「Amity《という非営利団体に注目した。
Amityとは、米国アリゾナ州を拠点とする、犯罪者やあらゆる依存症者の社会復帰を支援する団体である。
一般の更生施設と異なる点は、スタッフのほとんどが以前虐待被害者だった、受刑者だったということである。
よって、なぜ犯罪を犯すようになったのか、子供時代にまでさかのぼって見つめ、その傷を受け止めるという治療がしやすい。
ケアを受けている人の平均逮捕歴は27回、そして90%が少年時代からの問題ありという状況にかかわらず、再犯率は一般刑務所の半分以下で26%だ。
そして、このAmityで犯罪者の更生に大きく関わっているのはLifersとよばれる人々だ。
Lifersとは、終身刑もしくは無期刑受刑者のことである。
AmityでのLifersの役割は、ドキュメンタリー映画「Lifers~終身刑を超えて~《で詳しく紹介されている。
元患者は、「変わりたい、と思えるようになったきっかけは?《と聞かれ、「Lifersのおかげだよ。《と答える。
そして、Lifersの一人はこのように語っている。「社会復帰していく受刑者が、再犯しないように働きかけること。
これが、取り返しのつかない罪を犯した自分にできることだと思う。《
犯罪者が犯罪者の更生に携わるというのは、とても画期的なシステムだと思う。
また、凶悪犯罪者たちの根本的な問題は、彼らの年少時代にあるということが多く、原因を追究し更生はさせるのはなかなか容易ではないが、
同じ背景を持ったスタッフが関わることにより、彼らの反応も少し異なってくるのではないだろうか。
財務省は、平成20年度の刑務所出所者に対する再犯防止費を10億円増額させることを発表した。
内容は、出所後に就労先の確保や更生保護施設の設置などのプログラムの充実を図るというものである。
出所者の就職は、再犯率と大いに関係してくるものなので、重要な点である。
しかし、「協力雇用主《の上足や刑務所内での職業訓練が必ずしも就職に結びついていないという問題も存在する。
そこで、その点に関する海外の取り組みを見てみた。ロンドン郊外のエイズベリー少年院では、トヨタが工場を建設し、
受刑者に職業訓練を実施している。そして、彼らに国家資格を取得させ、出所後に就職させるというシステムだ。
企業は社会貢献するとともに、上足人員が確保できるというメリットがあり、また、社会コスト、再犯率も減少する。
やはり、犯罪については日本より海外の方がはるかに進んでいるので、これからも海外の取り組みや政策を見ていきたいと思う。
パワーポイント
前期の発表
『スクールカウンセラーと犯罪予防』
環境犯罪学などの「物理的《な犯罪予防ではなく、「人を対象《とした犯罪予防はないかということで、
スクールカウンセラーの役割に注目した。スクールカウンセラーを犯罪予防に役立てることはできないか。
犯罪の原因は幼いころにあることが多い。子供たちの学校での問題はもちろん、少し工夫すれば、
虐待の早期発見など、家庭の問題についての相談相手になることができるかもしれない。
ただ、カウンセラーは勤務日が限られているため、時間の点でかなりの制約を受ける。
よって、生徒たちとの関係を深めるのも難しく、自分から相談しに来る生徒は少ないというのが現状である。
また、福利厚生が整っていないなど、待遇もよくないため、カウンセラーという職業は敬遠されがちで、
それがカウンセラー上足にも結びついている。
パワーポイント
意見・アドバイス
- スクールカウンセラーは、学校生活においての相談員。犯罪予防に結び付けられるか?どれだけ効果があるのか。
- 犯罪の発生原因は一つではなく様々な事象によって引き起こされるので、特定するのは難しい。そもそも犯罪に原因はあるのか?
- 社会復帰のサポートについて考えると、また違ってくる。研究の対象は何か。
- イギリスでは、他傷傾向や親や先生の言うことを全く聞かない子供達を施設でマンツーマン教育する。そういう政策も参考にするのはどうか。