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私は大学一年の夏に、テーマカレッジの海外研修の一環としてトルコ・イスタンブールに滞在しました。 滞在中に現地の大学生と交流する機会があり、そこで移民としてEU諸国に移住したトルコ人労働者の 抱える問題について知ったことが日本の移民政策、そして日本の移民の現状に興味を抱いたきっかけでした。 また、私の出身地・愛知県は外国人労働者の多い地域としても知られ、そのことも自分にとり身近な課題として 多文化共生を取り上げた動機のひとつです。
日本は現在、少子齢化で経済は外国人労働力に大きく依存しています。在日外国人は現在200万人を突破し、 もはや日本経済は彼らの存在なしには成り立たないともいえます。しかしその現実に対して、政府の彼らに対する福利厚生や 日本語教育は未だ十分なものではないのもまた事実です。島国・日本への移民受け入れ政策自体の是非を問う議論は多数存在します。 しかし、日本に流入する移民は増える一方であり、その存在は確実に日本を変えつつあります。 そこで、今回の研究において私は移民受け入れの可否ではなく、日本人社会の中で移民が現実に抱える問題点や 課題について焦点を絞り、単一民族国家日本において果たして多文化共生の国づくりが可能であるのか研究していきたいと考えました。
- 1.日本の移民の現状とその問題点(教育システム・社会保険等)
- 2.多文化共生社会への取り組み:国土交通省「北関東圏における多文化共生の地域づくりに向けて」の考察
- 3. 多文化共生社会への取り組み:多文化共生教育の現状
- 4.外国人コミュニティの地域貢献「成功例」と「失敗例」の比較研究
- 5.多文化共生教育「成功例」と「失敗例」の比較研究
- 6.日本で「多文化共生社会」の構築は可能なのか
現在の日本の移民政策は、日本が抱える現実にまったく即していないものだといえる。主として経済的な理由から、
今の日本は外国人に労働市場を開放せざるを得ない。少子高齢化で総人口の現象が現実の問題となってきたためである。
しかし、フィンランド生まれで日本国籍を取得したツルネン・マルテイ参議院議員が指摘するように、今の日本政府には
包括的な移民政策がないということもまた現実である。移民問題に対する政府の対応はちぐはぐで、各省庁の対応が互いに
矛盾することも少なくないという。また、労働力不足から移民労働力が大量に流入し地域社会・コミュニティを形作っていく中、
日本人住民との様々なトラブルも指摘されている。
本章では、ブラジル人労働者の多く住む愛知県豊田市の保見が丘団地
を例に移民たちの抱える問題点を取り上げたい。
愛知県豊田市の保見が丘団地には、ポルトガル語を母国語とするブラジル人が約3000人生活している。
名古屋近郊を中心として、その数は約6万人に達するという。その背景には、90年の入管法改正で、
日系ブラジル人の2、3世とその家族に職種を問わず自由に入国させ、その多くが定住を認められたという事情がある。
彼らの存在が愛知県下のトヨタの下請工場やその他地元工業を支えていると言っても過言ではない。しかし、彼ら移民は
日本社会で多くの問題を抱えている。
1つめは、彼らの多くがパートタイマーで、健康保険や年金に加入していない
という事実である。現在の法律では、雇用主にはパート従業員の社会保険料を負担する義務はないため、必然的に
彼らの生活は不安定なものになるリスクが高くなるといえる。2つめは、移民の子に日本の義務教育を受けさせる法律が
ないという問題である。移民の子の多くは日本の学校に入学するが、日本の教育制度に外国人の子に日本語を教える用意が
全くないため、中退率が増加し、結果として職に就けない若者の増加を招き、将来の社会問題に繋がると懸念
されている。
また第3の問題として、文化の違いによる騒音・ゴミ問題がある。どの問題も日本人と外国人両者に
とって深刻なはずだが、日本人の意識は騒音問題等に集中しがちで、外国人コミュニティと日本人社会の間の大きな
障害になっていると言われている。
参考文献・WEBサイト: Newsweek誌 2006.9.13
外務省「在日ブラジル人の教育問題に関するシンポジウム」
第一章で論じたように、移民・在住外国人が抱える問題は様々なものがある。しかし一つ言えるのは、
日本人の「移民」に対する意識のずれが後手後手に回っている諸政策や住民間のトラブルの根幹にあると
いうことである。
この問題に対する取り組みとして、国土交通省の「北関東圏における多文化共生の地域づくりに向けて」
を取り上げたいと思う。この調査は北関東圏(茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県)を対象にしたものだが、
「多文化共生」という普遍的なテーマについて詳しい考察を行っている。
国土交通省「北関東圏における多文化共生の地域づくりに向けて」
授業発表時のパワーポイント
第二章では国土交通省の取り組みについて論じたが、「コミュニティ全体」と対象が幅広いためより研究対象を絞り込む必要がある、と考えた。 そこで本章では学校での「国際理解教育」を切り口に、「外国人児童の就学問題」から多文化共生について論じてみたい。
授業発表時のパワーポイント文部省(当時)が1999年「日本語教育が必要な児童・生徒の受け入れ状況に関する調査」を実施したところ、1995年調査と
比較して小学校50%、中学校35%の増加率を示していた。しかし、その現状に対し外国人対象の教育指導要領日本には
現在存在していない。
文部科学省「国際教育に関すること」母語別在籍状況では、ポルトガル語件・中国語圏・スペイン語圏の順に多い。
1997年調査と比較して・・・
☆「長期化・定住志向」 :ポルトガル語圏、中国語圏、スペイン語圏の児童・生徒の多くが日本での進学・就職を希望している。
これまでの、「外国人のお客さん」という固定した援助対象者から「学習の主体」としての位置づけが必要であると考えられる。
しかし多くの子供たちは、日本の学校に適応できていないのが現状である。
兵庫県A市のベトナム難民の子供たちは、学習の面で日本人児童に遅れをとりやすい一方、日本生まれ日本育ちのため、
母国語をほとんど話すことができない。
彼らの多くは公営住宅に住んでいるため公民館を遊び場にしているが、彼らは「日本の子供は塾があるから遊べない」と言い、
日本人児童との交流が少なくなっている。
また、日本語の習得が難しい両親と十分な意思疎通が図れない、という問題点もある。
日本の教育は対症療法的であり、
この、コミュニケーションと教科学習二つの困難が彼らを地域コミュニティー、ひいては日本社会からの「境界化」を生み出し、
将来の「反社会的な行動」への懸念が生じている。
☆ボートピープル:ベトナム戦争後、新しい政治体制になじめず、漁船などの小型船に乗って国外脱出したベトナム難民。
日本では1975年に初めて到着した。その後、政府は78年に定住を認める方針を決定。2006年末までの受け入れ
数は3639人で、近年では家族再会のための定住が大半。神戸市によると、市内のベトナム人は1980年の16人から
2007年3月末に1269人と約80倍に増えた。うち長田区に約6割の747人が暮らす。
第三章では、主に実際に身近に移民が存在する環境下での学校教育について述べた。 本章では、そのような環境にない子供どもたちが学校教育の中でいかにして国際感覚を身に着けていくか、という取り組みについて述べたい。
授業発表時のパワーポイント続く・・・
last update : 08/07/29
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