ゼミU
研究テーマ 『限界集落〜綾部市〜』
私がこの研究テーマを設定した理由は、東京に出てきて地元である京都、綾部のことを何も知らないということをひしひしと感じさせられたからです。なので、この研究を通して地元のことを知ることができたらと考えています。
そこで、私が選んだ研究テーマは綾部市が取り組む“限界集落”の政策について研究していこうと考えています。
限界集落とは、過疎化が極端に進み、共同体として存続することが困難な集落のことを指します。人口の半数以上が65歳以上の高齢者の集落のこと。冠婚葬祭や農業に関する作業などで社会的共同体生活の維持が困難、というのが限界集落の定義。限界集落は、全国に2000以上ある状況です。
京都府綾部市とは、綾部市は京都府のほぼ中央に位置し、市街地を清流由良川が流れる山紫水明の町です。市域は、東西に32キロ、南北に25キロ、面積は347.11平方キロと広大です。しかし、山林が77%を占めています。人口は1950年(昭和25年)
の昭和合併時の5万4千人をピークに、3万7千人と減少が続いています。
綾部市は、地域の振興と活性化を目指す「水源の里条例」を昨年の12月に制定し、今年の4月に全国で初めて施行されました。5年間の期限付きで、全国初の限界集落に関する条例である。
この条例が掲げる4つの対策は、
(1)U・Iターン者の定住対策
@定住住宅整備に支援空き地
A空き家の有効活用
B定住促進事業の実施
(2)都市との交流
@都市交流イベントの開催
A貸し農園、オーナー制度の実施
B農家民拍と農業体験の実施
(3)地域産業の開発と育成
@特産物の開発
A農産物等の販売
B新規就農者に支援等
(4)地域のくらし
@合併浄化槽の整備
A飲料水供給事業
B高度情報化の推進
C防災・除雪
D保険・医療
E道路整備
F公共交通の確保
この条例では、
@市役所から25キロ以上離れ、
A65歳以上の高齢化率が60%以上、
B世帯数が20戸未満の
C水源地域に位置する
5集落を対象にしている。
その5つの地域とは、
栃(とち)→人口23人・高齢者比率61%
大唐内(おがらち)→人口30人・高齢者比率63%
市茅野(いちがや)→人口12人・高齢者比率100%
古屋(こや) →人口7人・高齢者比率86%
市志(いちし)→人口23人・高齢者比率100%
このうち後継者が同居している世帯数は、3/56。
Uターン者については、栃・大唐内・ 市茅野で見込まれる世帯があるが、古屋・位志については見込みがない。また、大唐内に3世帯のIターン者が存在する。
それぞれの地域資源として、以下のものがある。
栃→山菜
大唐内→山椒、タラ、ウド、松茸、山菜、木工
市茅野→山菜、炭焼き、木工
古屋→トチ、山菜、清流
市志→フキ、山椒、ミョウガ、山菜
今まで実際に行われてきた実績として以下のもが挙げられる。
(1)について
Uターン者で農業をするものに対して支援を行っている。無農薬の米を作ったり等を行っている。
(2)について
綾部市では、昨年市志集落において地域の特産物であるフキノトウとフキを活用した収穫体験ツアーを旅行業者と連携して開催した。
このツアーは、百二十人を超える都市住民が参加し、他の地域では体験できない珍しいツアーということもあり大好評だった。
(3)について
荒廃田を開墾し特産品であるフキを栽培した。ここで栽培されたフキを近くの温泉地域などに出荷している。
また、栃の実を使い栃モチを作っている。
その他にも、「上林いきいきセンター」を作ったり、限界集落についてのシンポジウムを開いたりしている。
これらの活動は確実に住民の人を活性化させている。
しかし、過疎化を止め、U・Iターン者を呼び込む決定的なものにはなっていない。
(1)と(3)の政策に注目
なぜなら、限界集落を存続させるためには、U・Iターン者が定住することが不可欠であると考えます。そして、U・Iターン者が定住が限界集落で暮らしていけるようにするためには、住む場所を確保すること、そして生活しているだけの経済活動が必要です。そのため、(1)の定住対策と(3)の地域産業の開発と育成の2つの政策について考え、U・Iターン者が限界集落に住める環境を作ることが重要であると考えました。
まず、(1)定住対策について
●定住対策
・空き家の積極的利用→限界集落に存在する空き家の情報を「里山ねっろ・あやべ」に載せ、居住希望者を募る
・住宅整備補助金→限界集落に存在する住宅は、そのままでは住みづらいため改装が必要な場合が多々あります。その改装にかかる費用を150万円を限度に1/2を補助する制度
・定住支援給付金→1ヵ月5万円を12ヶ月を限度に支給す制度
●定住対策の現状
・綾部市内に定住を希望している人は677名いました。主に京阪神や関東の都市住民が希望。年齢層は、6割が団塊の世代で、4割が20代から40代。その多くの人が「水源の里」の空き家を希望。
●定住対策の課題
・U・Iターン者を受け入れる空き家の確保
→現状では、「水源の里」5集落に空き家はゼロ。まず空き家を見知らぬ人に貸すのが嫌という理由で空き家を提供するのをためらう人がいる。Iターン者を受け入れるだけの意識ができていない。また、空き家を利用する必然性を感じていない。そして、空き家のようにみえてもお盆だけ帰ってくる人や、Uターン者のための家が存在する。
●現状の(1)に対する評価
定住対策、特に空き家の積極的利用に関してはうまくすすんでいない。
(3)地域産業の開発と育成について
●取り組みの成果
・農産品の加工所を備えた、老富会館の完成
・鹿の食害から栃の実を守るため、市民が協力をして防獣ネットを設置。そして、栃の実30kgを収穫し、栃もちを作成・販売。
・フキの栽培と出荷
・ふきなどをつかった佃煮を作成し、地元の綾部温泉や阪急百貨店にて販売。
・「水源の里サポーター制度」を創設し、共同作業を手伝ってくれる人を募った結果、現在24名が登録。
●今後の課題
・この地域産業で生計をたてていくことができるようになるまで育てることが必要。
国の政策
・総務省は、平成12年4月1日、平成21年度までの10年間の時限立法として、過疎地域自立促進特別措置法が制定された。これは、人口の著しい減少に伴って地域社会の活力が低下し、生産機能及び生活環境の整備等が他地域と比較して低位にある過疎地域の自立促進を図ることにより、住民の福祉の向上、雇用の増大、地域格差の是正に寄与するという従来からの目的に加え、過疎地域が、豊かな自然環境に恵まれた21世紀にふさわしい生活空間としての役割を果たすとともに、地域産業と地域文化の振興等による個性豊かで自立的な地域社会を構築することにより、我が国が全体として多様で変化に富んだ、美しく風格ある国土となっていくことに寄与することも目的としているものである。
・ 農水省は、平成12年度から中山間地域等直接支払制が導入した。中山間地域等は農業生産、自然環境保全、保健休養、景観等、様々な面において重要な地域ですが、耕作不利な条件から農業生産性が低く、農業所得・農外所得ともに低い状態となっている。また、農村地域は全国平均よりも高齢化が進んでいますが、特に中山間地域等は高齢化が進行しています。このような耕地条件の悪さ、高齢化の進行に加えて、担い手の不足、恵まれない就業機会、生活環境整備の遅れなどにより、中山間地域等の農地では耕作放棄が深刻化しており、このまま放置すれば、国民全体にとって大きな損失が生じる事が懸念されている。農業生産条件が不利な状況にある中山間地域等における農業生産の維持を図りながら、多面的機能を確保するためこの制度が導入された。
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Last Revised 2008/07/15
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