なぜクマが重要なのか?
野生動物との共生を目指す上で、私はクマを取り上げて研究しています。しかし多くの人は、確かに絶滅しそうな動物を保護することは重要であるが、実際にクマがいなくなる事でそんなに自然界に影響を与えるのかと考えるでしょう。人間の生活を脅かしてまで守るべき動物なのか疑問だと思います。
二ホンオオカミが絶滅し、シカやイノシシが増えたことは述べました。そして現在生態系の頂点にいるのはクマです。しかしその役割はオオカミとは異なります。クマは動物を襲って食べることはないため、弱肉強食によって生態系バランスを保つということはありません。だからクマがいなくなったことで、他の動物たちに直接影響を与えることはないと言えます。
しかし、実はクマは、動物たちの命を支える"森"を守るために重要な役割を担っているのです。
=ツキノワグマの場合=
食事はほとんどが木の実です。
木の実を採るために木に登る→高い木の枝を折りながら実を食べる→森に光が入る→木々の成長を助ける
=ヒグマの場合=
川で海から来た鮭を捕まえる→森に持っていき食べる→食べ残しが土に残る→海特有の成分が木々の栄養となる
このように、クマは食物連鎖の頂点にはありませんが、生態系の傘として重要です。
またクマは他の動物たちに比べ高度な生態学的要素を必要としている事から、クマが棲める森にはどんな動物も棲むことができるといわれています。
よって、クマと上手に共存していくことは、森と他の動物を守ること、そして私たちの生活を守ることにも繋がるのです。
参考サイト:信州ツキノワグマ研究会HP
WWFヘレロ博士夫妻講演会資料(※PDFサイト)