政策科学研究

早稲田大学社会科学部 上沼ゼミナール

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研究テーマ:外来魚問題について

☆研究動機

 私は高校時代の部活動で地元の外来魚問題について取材し、ドキュメンタリー番組を制作しました。その過程でさまざまなことを考えさせられました。

 そもそもこの問題は、ブラックバスやブルーギルをはじめとする、もともと日本の湖には生息していなかった外来魚が、湖の生態系を変えてしまっているという問題です。またそれだけではなく、自然保護派と、外来魚を釣りなどの観光資源として利用している人々との間の対立も問題となっています。このように外来魚問題はさまざまな問題を含み、多面的に物事を見ていかなくてはならないため、政策科学研究のテーマとして適切だと考えました。

 私がドキュメンタリーを制作してから3年が経ち、この問題を取り巻く環境も大きく変わってきています。現在の状況を踏まえた上で、この研究を進めていきたいと思います。



ラージマウス・バス


章立て
序章 外来生物ってなんだ?
第1章 外来魚の日本での分布と歴史
第2章 外来魚が生態系に及ぼす影響
第3章 外来生物法
第4章 外来魚を取り巻く問題
第5章   
第6章            


序章:「外来生物ってなんだ?」
 外来生物とは、もともとその地域にいなかったのに、人間の活動によって外国から入ってきた生物のことを指す。しかし、渡り鳥や海流にのって日本にやってくる魚や植物の種などは、自然の力で移動するものなので外来生物には当たらない。

 身近な外来生物には、ブラックバスやブルーギルの他にも、シロツメクサ(四葉のクローバー)、アメリカザリガニ、ホテイアオイ(金魚の水草)、ミドリガメなどがあげられ、日本の野外に生息する外来生物の数はわかっているだけでも約2000種にもなると言われている。

原因としては、
  @多くの動物や植物がペットや展示用、食用、研究などの目的で輸入されたこと。
  A荷物や乗り物などに紛れ込んだり、付着して持ち込まれたこと。

などがあげられ、これらの外来生物が、何らかの理由で自然界に逃げ出した場合、多くは子孫を残すことができず、定着することができないと考えられている。しかし、中には子孫を残し、定着することができる外来生物もいる。

それらが、地域の自然環境に大きな影響を与え、生物多様性を脅かすものを、特に侵略的外来生物と呼び、マングース、グリーンアノール、ブラックバスなどがあげられる。本来の生息地ではごく普通の生き物として生活していたもので、その生き物自体が恐ろしいとか悪いというわけではない。たまたま、導入された場所の条件が、大きな影響を引き起こす要因を持っていたに過ぎない。
例えば、日本ではごく普通にどこにでもいるコイという魚や土手などに生えているクズという植物でも、本来生息・生育していなかったアメリカでは、異常に繁殖して、「侵略的」な外来生物だといわれている。

 では、侵略的外来生物の問題点とはどんなことだろうか。生態系は、長い期間をかけて食う・食われるといったことを繰り返し、微妙なバランスのもとで成立している。ここに外来生物のように外から生物が侵入してくると、生態系のみならず、人間や、農林水産業まで、幅広くにわたって悪影響を及ぼすことが考えられる。もちろん全ての外来生物が悪影響を及ぼすわけではないが、たいていの外来生物は自然のバランスの中に組み込まれ、大きな影響を与えずに順応していくと言われている。しかし、中には非常に大きな悪影響を及ぼすものもいる。

侵略的外来生物が与える影響

ここまで侵略的外来生物が生態系をはじめとする自然環境に大きな影響を与えると紹介してきましたが、ではなぜそもそも自然環境を守らなくてはならないのでしょう?
私は、共感できるコラムを見つけましたので紹介します。 →  なぜ自然を守るのか

つまり、未来の子どもたちのために豊かな自然を残すことは大切だということ!

第1章「外来魚の日本での分布と歴史」


日本におけるブラックバスの歴史

このように現在、オオクチバスは、すべての都道府県で生息が確認されている。日本で合法的に放流されている自然湖は、オオクチバスの漁業権が認められている神奈川県の芦ノ湖、山梨県の河口湖、山中湖、西湖の4湖のみである。これらに関しては、放流は許可されているものの、生体魚の持ち出しが禁止され、流出河川にバスが逃げ出さないよう網を設置する等の措置がとられている。また、オオクチバスが認められている管理釣り場があるが、これらに関しても流出箇所にバスが逃げ出さないよう網等を設置することが義務付けられている。また新潟県、秋田県(暫定措置)、琵琶湖など在来種の保護などのために再放流を禁止した県、湖、川などもあるようだ。

ちなみに、
ブルーギルの日本への移入は、1960年にミシシッピ川水系原産のものを当時の皇太子明仁親王が外遊の際、シカゴ市長から寄贈され、それを日本に持ち帰り、食用研究対象として飼育したのち、1966年に静岡県伊東市の一碧湖に放流したのが最初とされている。
当初は食用として養殖試験なども行われ、各地の試験場にも配布されたが、成長が遅く養殖には適さないことが判明したのだ。そこで、その後起こったバス釣りブームの際に、バス釣り業界の関係者や愛好家の手によりブラックバスの餌と称して各地の湖沼に放流されたものが繁殖したとされている。

ブラックバス分布拡大の理由について
全国ブラックバス防除市民ネットワーク(http://www.no-bass.net/)では次のように語っています。
日本でこんなにもブラックバス(オオクチバス,コクチバス)が広がったのには、おもに二つの理由があります。一つ目の理由は、人によって各地の水域へと放流されたことです。魚は同一の水域内を自由に泳ぎまわることはできても、鳥みたいに空を飛んで水系間を移動することはできません。ですから、各地で確認されているブラックバスの水系を越えた分布拡大には、必ず人が関わっているはずです。二つ目の理由は、ブラックバス自体がもっている生物学的特性です。ブラックバスは、湖沼やため池、河川などの多様な環境に適応して生息できますし、北アメリカ原産なので冬の低水温に耐性があります。また、成魚は魚類・甲殻類食性ですが、生息環境に応じて柔軟に食性を変化させます。さらに、産卵数が比較的多く、かつ、雄親が卵・仔魚を保護する習性があるので、少数個体の放流で定着・増殖できます。そして、在来魚と比べて成長が早く2年目で約20cmに達します。このような侵略的な生物学的特性は、ブラックバスが各地の水域に定着するうえで役立ったものと考えられています。もちろん、これらの二つの理由のうち、どちらか一方でも欠ければ、これほどのブラックバスの分布拡大は起こらなかったものと推測されます。



スモールマウス・バス

※特定外来生物による生態系等に係る被害防止に関する法律
外来生物法

Last Update:2009/7/31
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