研究テーマ:歴史的景観の保護と観光政策
―香取市佐原地区の事例から―

早稲田大学社会科学部
 上沼ゼミナールU
3年 只縄 萌

研究動機

 よく日本の町並みは美しくないといわれる。しかし、江戸・明治初期に日本を訪れた外国人の記録をみると、当時の日本の町並みを高く評価している。その後現在の町並みが作られるまでにどのような経緯があったのか、また、美しい町並みをもう一度作り出すことはできないか、を考察するために、この研究テーマを選んだ。そこで同じ県内で町並みの保存活動をしている佐原をケースに研究することにした。


章立て

第1章 はじめに
第2章 景観保護に関わる法令
第3章 佐原地区とは
第4章 観光化の推進と現状
第5章 観光化に対する住民の意識
第6章 観光化の弊害

第1章 景観保護に関わる法令

 日本の近代都市計画は、明治維新以来道路の拡張、防災に重きを置いており、都市計画において景観の占める割合は多くなかった。しかし京都、鎌倉などの歴史的景観を保護する運動が起き、最近はよりよい住環境を築くために注目されてきている。
 現在歴史的景観保護に関わる主な法令は以下のとおりである。

・古都保存法
 →対象地区内で、新築・改築、外装の塗り替えを行う際に届け出が必要
・都市計画法
 →風致地区・景観地区
・文化財保護法
 →伝統的建築物保存地域、その中から国が重要伝統建築物保存地域を選定、助成を行う
・景観法
 →地方自治体が制定した景観条例に強制力を持たせることができる

第2章 佐原地区とは

 香取市佐原地区(旧佐原市)は江戸時代から昭和初期ごろまで、利根川の水運を利用した交易都市として栄え、北総の小江戸と称された。現在でも小野川の周辺を中心に、商家の蔵などの古くからの街並みが保存されている。
 しかし、佐原は昔から観光で成り立っていたわけではない。戦後、古い建築物を修復、新築の建物も周囲に調和ようにするなどして「水郷のまち」として町並みを整備していった。これらの町並みの保存、都市計画は、「NPO法人 小野川と佐原の町並みを考える会」をはじめとする地元住民と、行政の官民協働によって行われてきた。
 佐原地区は、1974年の文化庁、1982年の観光資源保護財団による調査など、早くから文化財としての価値を認められていながらも、地元住民に理解されず思うような成果をあげられていなかった。
 その後竹下内閣の「ふるさと創生基金」をきっかけに、町並みに関する関心が高まり、1991年住民を中心とした「佐原の町並みを考える会」(現:小野川と佐原の町並みを考える会)が発足。「考える会」の調査を元に「佐原市佐原地区町並み形成基本計画書」を作成、佐原市長に提出された。
 その結果、佐原市歴史的景観条例・町並み保存事業補助金要綱が制定され、都市計画の部署内にまちづくり推進室(現:まちづくり推進班)が設けられて官民協働の町並み保存体制が確立された。
 「考える会」が行政と住民の間に立つ形で、伝統的建築物の修理や電線の地中化などの事業が進められてきた。現在は町並みの保存のほかにも、小野川の川ざらえやシャトルバスの運行、地元ボランティアによる観光案内など、さまざまな活動が行われている。

略年表






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参考文献・関連リンクリスト

Last Update:2009/7/21
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