エコファンド

ー企業の環境保護に対するインセンティブを高める仕組みー

早稲田大学社会科学部上沼ゼミ3年 伊藤祐太


研究動機

以前から環境問題に興味があったが、環境破壊に大きな影響を与えているのは誰かということを考えていくとやはりそれは私達人間である。そして私たちの生活は多くの企業の活動や商品によって支えられている。そこで、企業がCO2排出や環境破壊に大きな影響力を持っていると考え、企業が環境保護に対する取り組みを行っていけば、環境負荷を大幅に軽減できるのではないかと考えた。環境保護に対するインセンティブを高めるためにはどうしたらいいのか。それを考えていくうちにエコファンドというものを知った。エコファンドを普及させていくためにどのような政策を提言できるかを考えていきたいと思い、このテーマを選んだ。

章立て


T:エコファンドとは
U:エコファンドの現状
V:施策の方向性
W:環境評価の手法


T:エコファンドとは

エコファンドとは、環境対策に積極的に取り組み、または自らエコビジネスを展開する環境関連優良企業(エコ・エクセレントカンパニー)を対象として、従来の投資基準だけでなく、そうした環境への取り組みも考慮して企業の銘柄の株を買う投資信託のことである。SRIの一種でもある。日本では1999年に日興証券が「エコファンド」をつくったのが始まりで、他社もそれに続いて販売を開始した。 従来の投資基準だけでなく企業が行う環境対策を評価する必要があるので、多くのファンドが調査機関に委託して企業の評価を行っている。例えば、日興エコファンドの場合はグッドバンカーという会社が調査の委託をうけている。企業にとっては、環境対策をすすめるほど融資を受けられるので、環境対策を推進しようとするインセンティブが働き、環境対策の促進効果をもつ。つまり社会的責任投資の普及は国の環境政策にとっても重要である。

実際にどのような企業が融資をうけているのか。日興エコファンドを例に見てみる。

日興エコファンド:株式組入上位10銘柄

  1. 三井住友(銀行)
  2. トヨタ(輸送用機器)
  3. ホンダ(輸送用機器)
  4. 東日本旅客鉄道(陸運)
  5. 三菱UFJフィナンシャルグループ(銀行)
  6. 日本通信電話(情報・通信)
  7. 東京ガス(電気・ガス)
  8. コマツ(機械)
  9. 東芝(電気機器)
  10. アサヒビール(食料品)

U:エコファンドの現状

登場した当時は、環境対策の優れた企業は長期的には株価の上昇が期待できると予想され、多くの一般投資家の関心を集めたが、現在は景気悪化のため運用成績が悪化しており、エコファンドの規模は伸び悩んでいる。原因は以下のようなものが考えられる。

主な原因

  1. 景気悪化
  2. 企業の環境対策の評価方法が不十分
  3. 商品内容・運用内容が不足
  4. 企業の情報開示不足
  5. 関心のある層を実際に購買に結び付けられていない

社会的責任投資に関する日本・アメリカ・イギリスの3カ国比較調査が行われ、以下に報告結果の表を示す。

<エコファンド等の購入への関心>


資料:環境省「社会的責任投資に関する日英米3ヵ国比較調査報告書」(平成15年)より作成

3ヵ国ともに高い関心を示している。そのうち日本は「関心はある」で最も多くの割合を占めているが、実際に購入している割合はアメリカ、イギリスに比べて少ない。

<エコファンド等の改善すべき点>


資料:環境省「社会的責任投資に関する日英米3ヵ国比較調査報告書」(平成15年)より作成

3カ国共通で最も多かったのが「ファンドについての情報が不足している」というもの。日本に関して言えば、「商品情報の不足」と「運用内容の明確化」、そして「知名度不足」の3つが多いので、課題としてはよりよい情報提供が考えられる。

V:施策の方向性

アメリカ、イギリスと同様に社会的責任投資に対して高い関心があるが、購買率が低く、社会的責任投資に関心のある層をいかに実際の購買行動に結びつけるかという課題が明らかになった。そこで、政府は普及のための誘導施策として、以下のようなものをあげている。

W:環境評価の手法


参考文献

環境省
日興エコファンド
『社会的責任投資の拡大に向けて』  

Last Update:2010/07/29
© 2010 Yuta Ito. All rights reserved.