日本のマンガ産業と振興政策

〜狩猟型から農耕型へ〜

早稲田大学社会科学部
政策科学ゼミ5年
吉田博明

章立て


序章 研究の意味と目的

 マンガからアニメへ、ドラマへ、映画へとマルチメディア化する現象は、今の日本ではもはや日常と化している。
 そのことから、マンガをさして「マザーコンテンツ」と呼ぶ人まで現れている。
 日本のソフトコンテンツの力を伸ばすには、マンガ産業の発展が最も基本で重要である。
 紙に文字を印刷しているだけのマンガは、アニメやドラマのように撮影のための大がかりなセットや見るためのモニターを必要とせず、映画のように映画館という施設を必要とせず、基本的には紙とペンだけですべてが完結する。
 また、情報商材は物質的な消費は伴わない。朝買った週刊誌は、そのままの姿で夜捨てられる。
 消費しているのは、週刊誌の紙でもペンのインクでもない。
 情報だ。つまり、一冊あれば、何十人、何百人もが消費をすることができる。
 以上の点から考えても、マンガは、識字率を除いてインフラや豊かさにそこまで大きく左右されない産業だと私は考えている。
 途上国では、安い紙とインクで印刷をして回し読みをすればよい。それで先進国とかわらない情報を消費できる。
 以上のことから考えて、マンガは世界中のどこでも楽しめるポテンシャルは秘めている。
 しかし現状でのマンガ産業は斜陽だ。
 この研究では、そんなマンガ産業の現状を分析し、どう発展させればいいか、そして具体的な方策まで踏み込んで考察をしている。
 テーマは狩猟型から農耕型へ。
 獲物を追い回す産業から畑を耕し苗を育て、成長させていくような産業にすることが、目的である。
 今日本のモノづくりは危機に瀕している。今までは安泰といわれていた各種メーカーが、不振にあえいでいる。
 私は、そんな今の状況を救うのはソフトの力だと考えている。そして、そのソフトコンテンツの根幹にあるマンガの発展こそが日本を救うことにつながると考えている。


第一章 研究動機


第二章 ソフトパワー

“文化の価値観に世界共通の普遍性があり、その国が他国と共通する利益や価値を追求する政策をとれば
自国が望む結果を獲得することが容易となる”

Joseph Nye

 この言葉は、クリントン政権下において国家安全保障会議議長、国防次官補を歴任したアメリカ・ハーバード大学大学院ケネディスクール教授のジョセフ・ナイが提唱した理論である「ソフトパワー論」の一節である。

 私は、この言葉があらわすように、今後の世の中では「軍事力」や「経済力」で敵対する相手を制するのではなく、「文化」や「政治的価値観・政策」(=ソフトパワー)が外交上大きな力となると感じている。この研究が、ただのマンガ好きの妄想にとどまることなく、日本がこれから世界とどう戦っていくかを考える一つのきっかけとしてのマンガ(=文化)研究になることを、目的としている。


第三章 マンガ産業は衰退産業

 マンガ産業は、毎年100億円ずつ減少している斜陽産業。

 特に週刊誌の落ち込みが激しい。一見日本のマンガはアニメやドラマなどにも展開しやすく、よくサブカルチャーの代表として取り上げられるので、発展しているのかと思いきやそうではないのが現実だ。


第四章 衰退の原因

 簡単に言うと、今までのマンガ産業は、獲物を追いかけてあちこちを走り回る狩猟型だった。
 衰退している原因は、主に、以下の3つだと考えられる。
  1. 市場の縮小
  2. マーケティングの欠如
  3. ファンの多様性の欠如