そこで、行政や社会活動家、マスメディアによって企業活動の責任が厳しく問われる昨今、企業にとってのコストとしてのCSRではなく、企業の持続的発展のためのビジネスチャンスとなるようなCSRについて研究したいと思った。
日本においてCSRに対する取り組みは諸外国と比べても早く、1970年年代から企業の社会的責任という言葉が使用されてきた。しかし、一般に日本企業がCSRに期待するものは、「企業の持続的発展」であり、そのため企業の社会的責任は企業の社会的貢献や企業イメージの向上を図る諸活動として考えられ、企業収益を実現した後の活動のみを指すものと誤解さえることが多かった。また、企業活動における利益実現が主の目標で、CSRは二の次と考えている企業経営者はいまだに多く、利益幅の小さな企業におけるCSR活動はあまり進んでいない。
このように、現在の支配的なCSRの考え方は、企業と社会を対立するものと考え、CSRを企業活動が社会や地球環境に及ぼす悪影響を改善するコストとして可もなく不可もない対応で対処しているのである。受動的姿勢のCSRを「消極的CSR」と呼ぶ。
@「一般的な社会問題」:
社会的には重要でも、企業活動から大きな影響を受けることはなく、企業の長期的な競争力に影響を及ぼさない社会問題
A「バリューチェーンの社会的影響」:
通常の企業活動によって少なからぬ影響を及ぼす社会問題
B「競争環境の社会的側面」:
外部環境要因のうち、事業を展開する国での企業競争力に大きな影響を及ぼす社会問題
いかなる企業であれ、すべての社会問題を解決したり、そのコストをすべて引き受けることはできない。そのため、社会問題をランク付けしその優先順位をつけることで、自社との関連性が高いAやBの社会問題に対する積極的CSRを計画できる。つまり、事業活動の現実や未来の悪影響を緩和するような「受動的CSR」から一歩踏み出し、社会と企業の双方に対しインパクトの大きいメリットをもたらす活動に集中する「戦略的CSR」を実践することができるのではないだろうか。
CSR活動:
(1)動物愛護:化粧品開発のための動物実験への反対キャンペーンを実施
(2)フェアトレード:天然原料の供給源に正当な対価を支払う
(3)女性へのDV:全世界でDV根絶キャンペーンを実施
(4)エイズ問題:全世界で若者のエイズ感染予防キャンペーンを実施「Be An Activist」(2010年)
(5)環境問題:製品の製造から販売まで、可能な限り地球環境への負荷を削減する
「Be An Activist」:
Defend Human RightsというCSR活動の理念の一つとして実施。2010年は世界中の様々なアーティストとコラボレーションをし、アーティスティックなレッドリボンの普及に努めた。これによって、THE BODY SHOPの社会的イメージは向上はするが、直接購買行動には結びつかない。エイズ問題を取り扱う根本的な理由は、創業者であるアニータ・ロディックの個人的な問題意識であり、社会的企業であるからである。このことから、エイズ問題はTHE BODY SHOPにおいて、「一般的な社会問題」と言うことができる。
CSR活動:
(1)災害援助
:緊急支援が必要な災害に対して援助をする
(2)
エイズ問題啓発
:HIV/AIDSの啓発・予防教育に関する先駆者として始め、現在グローバルに展開している「HIV/AIDS 予防・治療・ケアプログラム」
「HIV/AIDS 予防・治療・ケアプログラム」:
全世界でエイズ啓発を展開
している。
これによって、リーバイ・ストラウス&カンパニーの社会的イメージの向上はするが、直接購買行動には結びつかない。エイズ問題を取り扱うようになったきっかけは「エイズの社会での認識を高めるために力を貸してほしい」という社員の一声と経営陣の思いだった。このことから、エイズ問題はLEVI’S JAPANにおいて、「一般的な社会問題」と言うことができる。
CSR活動:
(1)日本人の性についての調査報告→「SOD Sex Survey」
(2)性感染症(以下STD)予防の啓発→「STOP! STD」
など、性感染症予防に関する正しい情報公開を通じて、日本社会へ貢献することを目的としている。
「STOP! STD」:
(1)性感染症予防に関するビデオ、映像コンテンツの製作及び頒布活動
(2)ホームページなどでの情報公開の開始
性感染症予防に関する正しい情報公開
など、性感染症予防に関する正しい情報公開を通じて、日本社会へ貢献することを目的としている。これにより、性交渉を媒介とするSTD予防を呼びかけることで、企業イメージの向上につながるとともに、視聴者にとって「性」が身近になる。つまり、性産業のイメージアップと性との距離感を縮めることによって、アダルト関連商品の売り上げにつなげているのである。この意味で、エイズ・STD問題はSODにとって、「競争優位な社会的影響」であり、この取り組みは戦略的CSRだと言うことができる。
CSR活動:
(1)疫病理解のための啓発活動
(2)エイズ活動をしているNGO・学生団体の支援
(3)口内の健康と全身の健康に関する取り組み
など、エイズ問題の活動家の支援だけでなく感染予防と差別偏見の撤廃を訴えるイベントを独自に企画している。歯周病や口内炎などと共にエイズに対しての知識を啓発することで、消費者の口内ケアの意識向上させることができ、自社製品の売り上げにつなげている。つまり、エエイズ問題はSODにとって、「競争優位な社会的影響」であり、この取り組みは戦略的CSRだと言うことができる。
<政府の対策>
・1989年に大阪と東京で製薬会社と非加熱製剤を承認した厚生省に対して損害賠償を求める民事訴訟が提訴され、厚生省内の「薬害エイズ」調査班発足。
・1996年に菅直人厚生大臣が厚生省内で隠されていたと自称する郡司ファイルなるものの発見を根拠とし、独断でエイズ訴訟原告と支援者達に謝罪。→和解が成立。
<政府の対策>
・2006年より毎年厚労省主催のレッドリボンライブを開催。有名人やアーティストを招き、感染予防啓発を訴えている。
・毎年6月にHIV検査普及週間をもうけ、渋谷を中心に無料検査所を設置し、主に若者に対してHIV検査を呼びかけている。
→対策は主に異性間の感染予防においている。これは同性間感染や感染後の差別偏見の撤廃を軽視している!!
→国としてのメッセージのため、マイノリティに特化したorデリケートな啓発は困難なのではないか。