この研究テーマにした理由は香港への旅行により貧困格差に興味を持ち、貧困格差の解消するための方法としてのBOPビジネスに興味を持ったからである。
私は二年の秋に香港に行った。香港の地下鉄の券売機で乗車券を買おうとしていたところ、浮浪者が近寄ってきて何かを言いながら手を差し伸ばしてきた。
これに私は大きな衝撃を受けた。よく聞く話ではないかと思う人もいるかもしれないが、1990年に日本で生まれ、特に不自由なことがなく
胡坐をかきながら暮らしてきた自分にとっては、インパクトがとても大きい出来事であった。その出来事をきっかけに私は貧困格差に興味を持ち、貧困格差
解消へのアプローチはどのようなものがあるかと考えたところ、政府開発援助やNGOの活動など様々なものがあったが、
自分はボランティアみたいなものは性に合わないと思っていて、さらに自分の興味のある経営やビジネスの視点でのアプローチ
はないかということで調べていたところ、慈善事業ではなくあくまで利益追求を行うBOPビジネスというものを見つけ、これを研究課題に決めた。
BOPとは「Base of pyramid 」の略である。
ピラミッドの一番下の部分を指し、この層の年間世帯所得の
大きさは3000ドル以下とされる。2007年に国際金融公社(IFC)と世界資源研究所(WRI)
によって共同出版された報告書「The next 4 billion」では、このBOP層は40億人いるとされ、
世界人口の約72%を占める。
一日の所得が8ドル前後の人々であり、相対的に生活にゆとりがあるため、企業がアプローチしやすい人々である。
一方で中間層と比べると、貧しく、より豊かになるための仕組みや機会が提供されていないことも多い。
BOP層に対して一方的に、BOP層のニーズに合っていると考えられる製品・サービスを提供していくビジネス。
あくまでも企業が主体となり、先進国市場と大きく変わらないビジネスを創り上げていく。
それがBOP1.0の基本姿勢である。
BOP層を消費者としてだけではなく事業パートナーとして捉え、
双方向性の深い対話の中でBOP層の真のニーズを見出し、それを満たすビジネスをともに
創り出して発展させていく。そのために企業に限らずそのビジネスに携わる多くのステークホルダー
(利害関係者)が主体となり、お互いの能力を最大限に活用したビジネスを創り上げていく。
それがBOP2.0の基本姿勢だと考えられる。