電車人身事故数ゼロの世界へ

―駅ホームの環境改善政策の観点から―

政策科学Ⅲ
社会科学部 4年
遠藤 魁


研究動機

 昨今の直通運転路線の増加傾向が強くなってきている。
 増加に伴う電車遅延の影響範囲の拡大。電車遅延の主な原因の一つが、人身事故である。今後人身事故によって、大幅な範囲において電車遅延が起きてしまう可能性が高い。
 対策としてホームドア設置数は増加しているが、なかなか進まない。
 この状況を改善してかなければ、電車遅延による労働意識の低下に繋がり、日本の経済は発展していかないのではないか、と課題意識を持ち、研究テーマとした。


章立て


第1章 現状分析

1-1電車遅延の主な原因

   大幅な遅延(10分以上)の大きな原因は「人身事故」(人と電車との接触)である。
 

原因別、支障時間別の輸送トラブルの発生件数(『鉄道輸送トラブルによる影響に関する調査結果の概要 』より)

1-2人身事故が起こりやすい路線

東武東上線の自殺が急増
中央線(1位)東武東上線(増加率1位)
東武東上線では同じ10年間に185件の自殺が発生した。中央線の7割程度だが、最近の3年間(2012〜14年度)に限ると78件(年平均26件)で、同じ3年間に79人が自殺した中央線に匹敵する。東上線の自殺が20件を超えたのは2009年度(23件)が初めてで、その少し前は年間6件程度という自殺が低水準の路線だった。 過去10年における路線別の自殺件数(東洋経済オンラインホームページより)

1-3人身事故数の推移

 人身事故数は減っているどころかむしろ増加。
鉄道の人身事故数と死者数の推移(産経デジタルホームページより)

1-4 電車の人身事故の主な原因

酔っ払いが大きなな原因である。
高齢者や視覚障害者の事故もある。
平成26年度 年齢別のホームにおける人身障害事故による死傷者数(『ホームにおける人身障害事故の状況』より)


第2章 政府の政策

 ふるさと納税制度における課題は大きく2つに分けられる。「納税者が制度を利用する際の問題」と「自治体が制度を利用する際の問題」である。前者の例として挙げられるのが制度の知名度が低く納税者が少ないことや手続きが面倒である事から納税を敬遠する人がいることなどであった。しかしながらこれらは民間サイトによるPR活動や法改正による手続きの簡素化により改善された。事実ふるさと納税利用者は東日本大震災を機に爆発的に増加し今も増え続けている。制度が盛り上がる一方で浮き彫りになったのが後者の問題である。これらは第一章で触れた制度設立時の意義からふるさと納税を乖離させてしまっている。私はこの研究でその中でも特に問題となっている以下の2つの課題を改善すべく政策提言を行う。

2-1 ホームドア設置施策の現状

 最も人身事故が多い中央線には、ホームドアが設置されていない。
ホームドアの設置状況(『ホームドアの設置状況』より)

2-2 ホームドア設置数の推移

 ホームドア設置駅数は増えている。山手線のホームドア設置は効果抜群。
ホームドアの設置駅数の推移(『ホームドアの設置駅数の推移』より)

2-3 ホームドア設置政策の今後

 国土交通省では、高齢者、障害者等、すべての駅利用者のホームからの転落を防止するための設備としてホームドアは非常に効果が高く、整備を推進。ホームドアの整備については、交通政策基本計画(平成27年2月閣議決定)において平成32年度までにホームドア設置駅を約800駅とする目標が設定されており、平成29年3月末現在におけるホームドア整備状況は686駅となっている。


第3章地方自治体の政策

3-1北海道


 ホームに鏡設置。
 自殺者を思いとどまらせる目的がある
東西線南郷7丁目駅に設置された札幌市営地下鉄初の可動式ホーム柵(『ウィキペディアー札幌市営地下鉄』より)

3-2新小岩駅


 ホームにロープが設置されている。混雑時は駅員が使用し、転落者を未然に防いでいる。
布の結びつけられたロープが伸びている。(キャリコネニュース『JR新小岩駅が人身事故対策でロープ導入 成田エクスプレス通過時に警備員が手動で展開』より)  

3-3JR西日本


 JR西日本金沢支社は、酔客のホームからの転落事故を防ぐため北陸線4駅で、ベンチの向きを線路に対して垂直にする。
 背景としては、ベンチから線路に向かって歩き出し、転落するケースが多かったためである。
 金沢支社の担当者は「ベンチの向きを変えてから、JR西全体の転落事故は減少している」と話している。
線路と平行に設置されている従来型のベンチ(JR西日本金沢支社提供) 転落防止のため線路と垂直になるように置かれたベンチ(JR西日本金沢支社提供)


第4章 政策提言

 この章では以上を踏まえ、①短期的②中期的③長期的の3つの政策を提言したい。

4-1 短期的政策:ホームの椅子を「平行」から「垂直」に


 まず、短期的な政策として、人身事故数上位10位以内の路線の駅ホームの椅子を「平行」から「垂直」にする政策を提言したい。
 主な目的としては、酔っている人転落事故防止が挙げられる。
 これは工数も少なく、あまりコストもかからないため、実現可能性も高く、短期的に行うことができる施策である。
 

4-2 中期的政策:ホームドア設置駅の基準を変更し、従来の政策を推進


 ホームドア設置駅の増加を、特に東日本で推進する。
 現在のホームドア設置政策において、設置駅を人身事故数を基準に優先順位づけする。
 これは工数もコストもかかるため10〜30年の期間を要すると思われる。
 そのため、中期的な政策として挙げた。

4-3 長期的政策:AIの画像認識を用いた自動警告 / 緊急停止システムの導入


 最後に、「AIの画像認識を用いた自動警告 / 緊急停止システムの導入」を提言したい。
 今後の技術の発展により、AIの画像認識の精度は向上していくと考える。
 この技術を使って、転落する可能性が高い動きをしている利用者を認識し、自動警告 / 緊急停止を作動できるシステムの設置が可能になるであろう
 これによって、人身事故を大幅に減らすことができ、0に限りなく近づけることが可能になる。
 しかし、やはり技術の発展には、工数もコストもかかってしまうため、長期的政策として、私は提言したい。
 以上が、私からの政策提言である。


第5章 まとめ

以上、現状分析から始まり、政府・地方の政策を例にしながら、政策提言を行なった。ホームドア設置政策自体、まだ開始から日が浅く、目を向けてきた課題についてはまだまだ議論の途中であるため先行研究が少なくアイデアベースの政策提言になってしまった。そのため今後も制度の動きに注目し、よりよい政策がないかを模索し続けていきたい。


参考文献


Last Update:2018/1/30
© 2015 KAi ENDO. All rights reserved.