つまりこの法律は子どもが貧困から脱却するために、さまざまな角度から対策を推進する目的である。
2013年に子どもの貧困対策の推進に関する法律が施行され、2014年には政府による子どもの貧困対策に関する大綱が閣議決定している。現在は各都道府県で大綱を策定している。内容は、教育の支援・生活の支援・保護者に対する就労の支援・経済的支援の四つの視点により子どもの貧困から脱却するための対策を推進するものである。
以下は子どもの貧困対策に関する大綱、第四条の指標の改善に向けた当面の重点施策、1.教育の支援の抜粋である。
(1)「学校」をプラットフォームとした総合的な子供の貧困対策の展開
貧困の連鎖を断ち切るためのプラットフォームとして学校を位置付け、 総合的な子供の貧困対策を展開する。
(学校教育による学力保障)
家庭環境や住んでいる地域に左右されず、学校に通う子供の学力が保障されるよう、少人数の習熟度別指導や、放課後補習などの取組を行うため、教職員等の指導体制を充実し、きめ細かな指導を推進する。 その際、学力や学校運営等に課題がある市町村に対し、国が直接改善 方策の専門的助言・体制の整備など重点的な支援を行うことを通じ、当 該市町村の自律的な改善サイクルを確立する。 また、学校における具体的な支援体制を充実させる観点から、現職教 員を中心に、子供に自己肯定感を持たせ、子供の貧困問題に関する理解を深めていくため、大学や教育委員会に対し、免許状更新講習や研修における関連講習、校内研修等の開設を促進する。
(学校を窓口とした福祉関連機関等との連携)
児童生徒の家庭環境等を踏まえた、指導体制の充実を図る。特に、学校を窓口として、貧困家庭の子供たち等を早期の段階で生活支援や福祉制度につなげていくことができるよう、地方公共団体へのスクールソーシャルワーカーの配置を推進し、必要な学校において活用できる体制を構築する。このような体制構築等を通じて、ケースワーカー、医療機関、児童相談所、要保護児童対策地域協議会などの福祉部門と教育委員会・学校等との連携強化を図る。また、児童生徒の感情や情緒面の支援を行っていくためのスクールカウンセラーの配置推進を図る。さらに、一人一人、それぞれの家庭に寄り添った伴走型の支援体制を構築するため、スクールソーシャルワーカー等と連携し、家庭教育支援チーム等による相談対応や訪問型家庭教育支援等の取組を推進し、保護者に対する家庭教育支援を充実する。
(地域による学習支援)
放課後子供教室や学校支援地域本部、土曜日の教育支援活動等の取組を推進し、放課後等の学習支援を充実する。その際、学習等に課題を抱える子供に学習支援や生活支援を実施しているNPOやフリースクール 等と各自治体との連携を促進するなど、子供の状況に配慮した支援の充 実を図る。さらに、学校・家庭・地域の協働の基盤となるコミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の設置の促進により、地域による学習 支援等の一層の促進・充実を図る。
(高等学校等における就学継続のための支援)
高校中退を防止するため、高等学校における指導体制の充実を図る。 特に、学習等に課題を抱える高校生の学力向上、進路支援等のための人 材を高等学校に配置するとともに、課題を抱える生徒の多い高等学校で の優れた取組を推進する。また、高校中退者等について、学校がハローワーク等に対し高校中退 者情報を共有する等により、就労支援や復学・就学のための情報提供の 充実を図る。 高校等中退者が高等学校等に再入学して学び直す場合、卒業するまで(最長2年間)授業料に係る支援を受けることができるよう、高等学校 等就学支援金相当額を支給する。 さらに、学校と地域社会等による優れた連携・協働の取組への表彰や、 学校のキャリア教育の指導内容に関する手引・パンフレット作成、教員 向けの説明会の実施等により、各学校段階を通じた体系的なキャリア教 育の充実を図る。 高度な知識・技能を身に付け、社会の第一線で活躍できる専門的職業 人を育成することを目的として、先進的で卓越した取組を行う専門高校における調査研究を推進する。
教育の支援の観点から、子どもの貧困率を減少するための施策を、このように記している。
しかしながら2013年に制定されたばかりの法律であり、この法律が直接的に関与して起こった結果である可能性は低い。
またこの子どもの貧困対策に関する大綱には懸念点が存在する。
以下は第三章の子供の貧困に関する指標の一部である。
・母子家庭の就業率:80.6%
(正規の職員・従業員:39.4% パート・アルバイト等:47.4%)
・父子家庭の就業率:91.3%
(正規の職員・従業員:67.2% パート・アルバイト等: 8.0%)
(出所:平成 23 年度全国母子世帯等調査)
○子供の貧困率 16.3%
(注) 17 歳以下の子供全体に占める、貧困線(等価可処分所得(世帯の 可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半 分の額)に満たない 17 歳以下の子供の割合。
(出所:平成 25 年国民生活基礎調査)
○子供がいる現役世帯のうち大人が一人の貧困率 54.6%
(注) 子供がいる現役世帯(世帯主が 18 歳以上 65 歳未満で子供(17 歳 以下)がいる世帯)のうち、大人(18 歳以上)が一人の世帯の世帯 員全体に占める、貧困線に満たない世帯員の割合。
(出所:平成 25 年国民生活基礎調査)
上記のように25つの指標が示されているが、今後どのような数値したいのかの目標設定が明確に示されていない。詳しい数値の目標設定は各都道府県任せになっている。全体的な目標設定がないと都道府県によっての目標設定がまばらになってしまう。
秋田県はこの十か条を広く提示することで、
と供述している。