ご覧いただきありがとうございます(^^) このページでは早稲田大学社会科学部上沼ゼミでの個人研究の成果を発表していきます。

日本の英語教育改革について

―4技能を育成し、「使える」英語を身に着けるには―

早稲田大学社会科学部4年 上沼ゼミナール
大島清陽



章立て
  1. はじめに
  2. 英語教育の変遷と現状
  3. 大学入試改革
  4. 海外との比較と事例
  5. 国内先進校の事例
  6. 英語教育の課題整理
  7. 政策提言
  8. 参考文献

1.はじめに

  • 研究動機
     私はかれこれ10年近く英語を学んでいるが、英語を満足に使えていない。大学生になり、学習塾でのアルバイトを続ける中で、私と同様に、多くの若者が同様の思いを抱えていることが分かった。また、世間では、「英語熱」が続いており、我が子に英語を勉強させようとする保護者の方も多いことからも、日本全体で「英語ができない」という認識があるのではないかと思う。義務教育で学んでいるのに、満足に用いることができないのはもったいない、否それ以上にそのような教育の現状のままでいいのか疑問に思い、研究を開始するに至った。
  • 研究意義
     ここ数年の訪日外国人の急増や、ますます拍車がかかる少子高齢化などの状況を鑑みると将来的には、(10〜20年後には)今まで以上に外国人に触れ合う機会は増加するであろう。その際に、バックグラウンドが異なる人同士理解し合う能力が必要である。また大きな話かもしれないが、異文化を学び、尊敬し、互いに認め合うことができれば戦争が起きる可能性は減ると私は考える。現在、学習指導要領が改変され、ほぼすべての子供たちが10年間英語を学ぶこととなったが、このままでは外国人と互いに理解し合うのは限られるのではないか、という疑問は今だ深く残っている。
  • 目標
     そこでこれまでの日本の言語教育を振り返り、他国や国内先進校の事例と比較しながら、外国人とコミュニケーションを取り意思疎通ができるレベルの言語政策を提言したい。よく指摘されるように「知識・文法偏重」ではなく、4技能を総合的に向上させることが目的である。 なお外国語の中でも英語に限っているのは、世界共通語として認識されている英語をまずは用い、言語政策が成果を挙げてから他言語にも挑戦すべきと考えているためである。


    2.英語教育の変遷と現状


     まず、初めに「英語ができない」と言われる日本の実情はどれくらいなのだろうか。一事例としてTOEFLテストの成績から見てみたい。

    「TOEFL の成績の国別ランキング(2010 年)」
    出所:首相官邸「グローバル人材育成推進会議 審議まとめ」(平成24年6月4日)

     このTOEFL(IBT)テストのランキングを見ると、日本は2010年において全体で135位/163位、アジア圏で絞ると27位/30位と客観的に見ても明らかに低い数値である。
     そもそもTOEFLとはどのようなものか。公式HPより引用すると、「TOEFLR テスト(Test of English as a Foreign Language)は、1964年に英語を母語としない人々の英語コミュニケーション能力を測るテストとして、米国非営利教育団体であるEducational Testing Service(ETS)により開発されました。大学のキャンパスや教室といった実生活でのコミュニケーションに必要な、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4つの技能を総合的に測定します。」(出典: TOEFLテスト日本事務局「TOEFLテスト概要」)
     なおTOEICはアジア圏受験者が多くの割合を占めることから世界的に受験されているTOEFL(IBT)のデータを用いた。
     このように4つの技能を測るテストだが各国によって受験者層が異なるため一律して比較はできないが日本の英語力が「高い」という事実はないことが分かる。そこで、なぜこのような現状になってしまったのか公教育における英語教育の変遷を振り返りたい。

    7.政策提言

     前章で挙げた課題を踏まえて最終的な政策提言を行いたい。
     大きくは「大学入試改革」、小さくは「小中高における英語教育の質の改善」である。前章でも課題として述べたように日本においては現状英語を使用することは日常的にあまりなく、英語を学ぼうと思っても結局は高校・大学進学のために「読み・聞く」英語に特化してしまうことが避けられないからである。いくら授業で4技能を総合的に伸ばそうと考えても、進学校になればなるほど受験英語の対策になるであろう。そのため、大学入試を変えることは日本において英語4技能を総合的に向上させるためには必要不可欠なものであることは疑いようがない。一方、大学入試を変えたところで、英語教育の質が上がらない限りは生徒の英語能力は著しく向上しない。特に小学校での英語教育が英語に対する好悪を決める可能性は高い。
  • 大学入試改革
     現在の問題点として挙げられる公平性や学習指導要領との整合性との観点から現状のように複数ある中から受けるシステムは問題がある。しかし、センター試験には「読む」「聞く」の知見しかなく、「書く」「話す」などの知見を持ち合わせていない。すでに4技能を評価している民間試験の知見は大変参考になる。そこで民間試験団体や大学教授、言語学者などを含め、国(センター試験)主導のメンバーで共通テストを学習指導要領に則った改変をし、学生が受ける試験を一本化する。ただ作成には時間がかかることが見込まれるため、それまでの間、より4技能を評価する傾向を強めるために、より民間試験の成績を評価する方向にすることを国公立・私立大学に要請する。なお、「話す」に関して多くの民間試験はタブレット端末に吹き込む方法を取っており、自分の意見を述べることは評価できる反面、「コミュニケーション」を評価することは難しい。しかし、「コミュニケーション」を評価する方法として面接形式を取っても、「コミュニケーション」という抽象的な言葉故に評価基準が難しいし、そもそも「コミュニケーション」は元来評価するようなものではない。そのため「自分の意見を言えること」を「話す」能力と仮定し、民間試験と同様の形態を取り、英検の2次試験のような対面方式にし、実際の「コミュニケーション」に近い形にする他ないだろう。
  • 小中高における英語教育の改善
     小学校から「教科」としての英語を行う場合、特に小学校の教員の英語力や英語指導力などの育成が必要となるが、現状として教員の英語に対する苦手意識や実力、負担を考えるにすぐに質が向上するのは難しいであろう。そこで教科担任制を導入し、教員の負担を減らすと同時に英語教育の質を向上させたい。当面は教員の不足が続くため、近隣中学校や高等学校の教員や英会話スクールと連携して教員を補う。(なお教育職員免許法により手続きを得ることで小学校にて英語を教えることが許可されている。)
     中学校及び高校においては、教員の英語力向上及び授業の内容や質の向上が必要である。長年にわたり、日本では「受験英語」による「読み」能力への特化と「文法偏重」が続いてきた。大学入試が変わることで中高においてもその節は変わっていくと考えられるが、体験型授業や定期試験にリスニングやスピーチテストを導入することで授業内容を確実に変えていく方法を提言したい。なお中学校教員の負担も加味して、文部科学省が積極的に教員の業務量削減にも手を加えることも同時並行に行うことで新たな取り組みに弊害が出ないようにする。

    8.参考文献


    Last Update:2020/03/24
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