ファッション業界の地球環境問題に対する課題

−サスティナブルファッションとしての古着による解決策−

早稲田大学社会科学部4年
上沼ゼミV 小宮山蓮


「ホコリまみれの服のイラスト」いらすとや
出所:「いらすとや」より

章立て

  1. はじめに
  2. ファッション業界が抱える環境に対する課題      
  3. 解決策としてのサスティナブルファッションとしての古着の活用
  4. 現在日本で行われている繊維リサイクルに関する取り組み
  5. 繊維リサイクルに関する調査と課題の特定
  6. 日本における古着回収から繊維リサイクルまでの流れ
  7. 古着回収における課題の特定
  8. 古着回収の課題解決のための政策提案

1.はじめに

 現在、世界、ファッション業界は「世界で2番目の環境汚染産業」と言われている。具体的な影響として、人間が出す二酸化炭素の約10%をも占めていたり、ファストファションの流行などによって、日本で1年間で約10t、約10億着以上もの衣料品が廃棄されている。 このような悲惨な状況が年々悪化してしまっているのである。
 この現状を受けて、現在注目を集めているのが「サスティナブルファッション」というものである。そして、私は自身の古着屋運営の経験をもとにサスティナブルファッションとしての古着の二次流通、繊維リサイクルに注目する。ファッション業界の抱える環境問題に対する課題の解決を政策提案によって図っていく。

2.ファッション業界が抱える環境に対する課題

 現在、世界、ファッション業界は「世界で2番目の環境汚染産業」と言われている。具体的な影響として、人間が出す二酸化炭素の約10%をも占めていたり、ファストファションの流行などによって、日本で1年間で約10t、約10億着以上もの衣料品が廃棄されている。

3.解決策としてのサスティナブルファッションとしての古着の活用

 サスティナブルファッションとは、自然環境や社会に考慮した生産や流通を行った持続可能な衣料品を指し、その中でも古着は加工による二酸化炭素の排出や廃棄物が一切出ないため、特に自然環境に良いものとして、注目されている。

4.現在日本で行われている繊維リサイクルに関する取り組み

 現在、環境省を中心として様々なサスティナブルファッションの取り組みが行われていて、その中でも上記したようなサスティナブルファッションとしての古着を活用した取り組みが行われている。
 まず、国としての活用の事例としては、環境省による衣料品のリサイクル資料の作成が挙げられる。この資料の中では年代別の意識調査や年間の排気量の開示などが行われていて、国民のサスティナブルの意識を促すようなものとなっている。具体的には以下の画像のようである。


図3「環境省の取り組み」
出所:環境省

 また、「循環型社会形成基本法」の制定も挙げられる。この法律は循環型社会形成に向け、国、地方公共団体、事業者、国民それぞれの主体の責務を説明する繊維のリサイクルに関する唯一の法である。つまり、繊維リサイクルにおいては他製品のようなリサイクル法は制定されていない。そのため、現状、民間、自治体、消費者、繊維メーカー等の自主的な取り組みに任せられている。
 そして、地域の取り組みも挙げられる。中古衣料を資源ごみとして回収していたり地域の集会所などでの古着回収やフリーマーケットによる廃棄量の減少や人々にサスティナブルの意識を促すような講習やリメイク体験のようなイベントの開催などが行われている。このような地域の取り組みは地域に任されている側面があるために、現状格差が生まれてしまっている。
 以上が現状行われている中古衣料、繊維リサイクルに関する取り組みである。


5.繊維リサイクルに関する調査と課題の特定

 これまで、ファッション業界の環境問題に対する悪影響や、それに対する現状の取り組みについて説明してきた。これらのことから、以下では、繊維のリサイクルを行う市民が実際にどのような課題を抱えているのか、ということに注目する。
 繊維リサイクルにおける市民の活動としては、古着、中古衣料の使用と古着回収の利用に二つに分けられる。ここで私は、S N Sのアンケート機能を用いて、10代から50代の約50人に対し、アンケートを行った。アンケートの項目としては、「古着、中古衣料を購入または使用したことがあるか」と「古着、中古衣料の回収やリサイクルショップでの売却を利用したことがあるか」の二つである。以下ではそれぞれの結果をもとに、考察をしていく。
 まず、一つ目の結果は、「購入・使用したことがある」と答えた人が70%で、「ない」と答えた人が30%であった。その内、あると答えた人のほとんどがリサイクルショップや古着屋を利用していた。また、二つ目の結果は、「回収の利用・売却を利用したことがある」と答えた人が25%で、「ない」と答えた人が75%であった。一つ目であると答えた人のうち、半分以上がないと答えていた。また、一つ目でないと答えた人の多くが二つ目もないというように答えていた。そして、これらの結果は、どの年齢や職業分類でも近い結果を占めていた。以上が私の行った調査と結果である。
 この結果をもとに、私は、繊維リサイクルにおける課題は「古着の回収」の分野にあると考える。一つ目と二つ目の結果を比較し、多くの人が古着回収を利用したことがないことに加え、使用に抵抗がなく、古着を好んでいる人「ある」と答えた人の半分以上が、古着回収を利用したことがないということから、繊維のリサイクルにおける課題は「古着の回収」の分野にあるということが、この調査からわかった。このことから、以下では日本における繊維リサイクルの中の「古着の回収」に注目し、現状の課題の解決を図る。

6.日本における古着回収から繊維リサイクルまでの流れ

 上記の調査をもとに古着の回収に課題があることがわかった。そのため、以下では日本における古着回収の流れと概要について述べる。まず、日本における古着回収の流れは大きく回収、分別。加工・二次流通の三つのプロセスを経て、二次流通される。以下ではそれぞれの段階について詳しく述べる。
<きちんと改行して、段落を作りレイアウトを整える。>  まず一つ目は「回収」である。この回収は家庭内や店舗などで不要となった中古衣料・古着を資源として回収することを指す。この回収は行政回収と集団回収の二つに分けられる。
 一つ目の行政回収は、資源ゴミとしてのゴミ回収や、前述したような地域ごとの古着回収などの行政が行う古着回収のことを指す。行政回収の例として、杉並区では普段の資源ゴミとしての回収車による回収と、毎月第二土曜日に区内十箇所で古着回収を行っている。
 次に二つ目の集団回収とは、ボランティア団体や企業による回収のことを指す。具体的な例として、H&Mでは各店舗に回収ボックスを設け、古着の回収を行っている。
 以上が現在おこわれている主な古着回収である。
 次に、二つ目が「分別」である。分別とは、回収によって、集められた古着を素材や状態ごとに分別する作業であり、主に繊維リサイクル業者が行う。まず、古着を加工品用と二次流通品に分けられる。古着を分ける際の基準は損傷の程度や古着としての価値、その古着の状態である。さらに加工品はリサイクル・加工に向けて、使われている素材ごとに分別する。一つの古着でも様々な素材が使われているために、素材ごとに裁断され、分別する。
 そして三つ目が、「加工・二次流通」である。この段階では、二次流通に向けて、繊維製品やリサイクル繊維として加工・販売されたり、古着として国内や国外で販売され、古着が二次流通される。二次流通には、主に四つの方法が存在する。一つ目が繊維製品への加工、二つ目が再生繊維への加工、三つ目が国内二次流通、四つ目が国外輸出である。以下ではそれぞれについて、詳しく説明する。
 まず、一つ目は「繊維製品への加工」である。回収し分別した素材を加工し、繊維製品として二次流通させる。ここでは主に工場用雑巾であるウエス・反毛として加工される。しかし、このウエス・反毛は工場の国外進出や国内工場の減少により、国内需要が低迷している。
 二つ目は「再生繊維への加工」である。再生繊維への加工とは、分別を行い、素材ごとに分けられた布を様々な方法で再生繊維として加工し、二次流通する。具体的な方法としてはケミカルリサイクルなどが用いられる。このケミカルリサイクルとは、ポリエステルなどのプラスティックを化学的に分解し、再び製品の材料として二次流通させることである。このような再生繊維への加工は、現在ファストファッションや衣料品の機能性を重視した混合衣類の流行により、国数がかかる、コストが高くとなってしまっている。
 三つ目は「国内二次流通」である。国内二次流通とは、分別の段階で、状態の良い古着としての需要が高いものを古着として、国内で二次流通させるというものである。この国内二次流通をすることができるような古着は需要の有無が基準となるために、ブランド品などに限られてしまう。
 四つ目は「国外輸出」である。国外輸出とは、分別の段階で、衣類としての利用が可能であるものの国内需要が少ないなどの理由から、国内二次流通されないような古着を、衣類が不足している国々や工場が多く存在する国々にウエスの材料として輸出することである。日本の古着は状態や品質が高く、海外での需要が高い。東南アジアでは「ユーズド・イン・ジャパン」と呼ばれるほどに需要が高い。
 以上が日本における古着回収の流れである。

7.古着回収における課題の特定

 サスティナブルファッションとは、自然環境や社会に考慮した生産や流通を行った持続可能な衣料品を指し、その中でも古着は加工による二酸化炭素の排出や廃棄物が一切出ないため、特に自然環境に良いものとして、注目されている。
 次に、上記のことをもとに、日本における古着回収の課題を特定する。私は古着回収に関して、三つの課題を特定した。一つ目が市民の資源回収に関する意識の低さ、二つ目が繊維リサイクルに関する法律が制定されてないこと、三つ目は回収環境が整ってないことである。以下ではそれぞれの課題についてより詳しく述べる。
 一つ目は「各主体の古着の資源回収に関する意識の低さと格差」である。環境省の調査や自身の調査から、市民の資源回収の低さが課題であるということを特定した。この意識の低さが回収率の低さや資源ゴミとして回収せず、ゴミとして廃棄してしまうという現状につながってしまっている。また、自治体や集団間の回収に対する意識の格差も問題である。この問題は法整備が整っておらず、各種隊に任されている現状に起因する。
 二つ目は「繊維のリサイクル法が制定されていないこと」である。繊維リサイクルにおいては他製品のようなリサイクル法は制定されていない。そのため、現状、民間、自治体、消費者、繊維メーカー等の自主的な取り組みに任せられており、個々の格差が生まれてしまうなどの問題が起きている。
 三つ目は「回収環境が整ってないこと」である。回収環境が整ってないことが回収率の低さにつながっている。月に数回の回収や回収場所まで不要になった古着を持っていかなければならないという手間がかかるなど回収環境が整ってないことが回収率の低さにつながっている。また、開封環境が整っていないために、回収した古着が濡れてしまい、再生が不可能となってしまうなどの問題も起きている。
 以上の三つが古着回収における課題である。

8.日本における古着回収から繊維リサイクルまでの流れ

 ここでは特定した三つの大きな課題を政策の提案によって解決を図る。私は上記の様な現状から、以下の二つの政策を提案する。
 一つ目は「繊維リサイクルに関する法整備」である。他の製品と同じ様な繊維リサイクルに即した法律を整備することで、繊維リサイクルの基準を設けることで、各地域、各集団間のリサイクルに関する意識や徹底度合いの格差を是正することができるからである。これによって、古着回収時間今日が整うとともに、統一されることで、古着回収が市民により日常的になり、回収に対する意識づけを行うとともに回収率の上昇にもつながると考える。
 二つ目は「回収ボックスの設置の奨励」である。これは、回収環境の悪さによる回収率の低下や回収品の状態が悪いといった問題を克服することを狙いとしている。具体的には、不要になった古着を入れる密閉可能なボックスを、ペットボトルの専用回収ボックスと同じ様に、ゴミ置き場に設置する。これによって、雨の日の回収の際にも、濡れることなく良い状態を保ったまま回収することが可能となる。また、他のゴミ回収と並行して週に数回の回収を行うことも可能となる。そして、古着回収のために回収場所に古着を運ぶ手間も省くことができる。以上の様に、ゴミ置き場に回収ボックスを設けることで回収環境の改善を行い、回収率の向上を図る。
 私は以上の二つの政策を提案するとともに、この研究の結論とする。

参考文献


Last Update:2023/01/31
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