男女育児平等を目指して

社会科学部4
上沼ゼミⅢ 玉井希来


「イメージ画像」:出所マイナビニュース>長谷部敦子(2021/06/15)より

章立て


第1章 はじめに

 今日の大きな社会問題の一つとして、少子高齢化問題が存在する。日本の総人口は、平成20年の1億2808万人をピークに、23年以降は減少傾向にある。更に、平成30年には、65歳以上人口が0~14歳人口の2.3倍となっており、深刻な少子高齢化を物語っている。

「日本の総人口及び総人口に占める0~14歳、65歳以上及び75歳以上人口の割合」:出所総務省統計局

 そこで本論文筆者が着眼したのが、育児環境である。女性が、職場に籍を置きながら妊娠・出産をすることは困難で、平成30年の内閣府の調査によると、第1子出産を機に離職する女性の割合は、46.9%であった。以前であれば、男性が仕事をして女性が家事をする家庭内役割分担に何の疑問も抱かなかった。しかし、共働き世帯が30年前と比較して約2倍の1188世帯(2017)に増加し、如何に共働きを継続しながら妊娠・出産に繋げられるかは、新しい常識となりつつある。そしてこれを達成することによって、少子高齢化を食い止めることに繋がるのではないかと考える。
 しかし、働く女性の出産・育児に関する政策は年々改善されてきており、注目する人も増えてきている。そこで、新しい切り口になると考えたのが男性の育児に関する政策である。男性の育児を拡大させることで、女性の継続就業率を上げることが出来るのではないか。
 本論文筆者は、働く女性が今より出産や育児へのハードルを下げることが出来るための、男性育休取得率の数値向上を目的として研究を行う。

第2章 育児支援政策

 巽(2018)は戦後の日本における父親育児支援政策を、
  1. 1・57ショック以後(1990年~2001年)
  2. 夫婦の出生率低下以後(2002年~2009年)
  3. イクメンプロジェクト開始以後(2010年~2017年)の3つに分類している。
 第1区分での主な取り組みは、1992年の「育児・介護休業法」や1994年の「エンゼルプラン」(今後の子育て支援のための施策の基本的方向について)が挙げられる。エンゼルプランは、今後10年間に取り組むべきことの基本方針と重点施策を定めた計画のことで、その実施のために「緊急保育対策等5か年事業」が策定され、保育の充実、拡大の整備が進められた。また、1999年には「少子化対策推進基本方針」が決定され、このための「新エンゼルプラン」(重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について)が策定された。しかしこれらの政策は、 直接父親を対象としたものではなかった。
 第2区分では、2002年にまとめられ、保育から子育て家庭へと視点を移した取り組みである「少子化対策プラスワン」や2003年の地方自治体及び企業内での取り組みを促進する「次世代育成支援対策推進法」、2005年に閣議決定された「第2次男女共同参画社会基本計画」などの政策が挙げられる。また、2007年のワーク・ライフバランス政策では、就労と結婚・出産・子育てという二者択一構造解決のための新しい動きとなった。これらの政策に共通していることは、いずれも「男性、父」という言葉が明記されていることである。しかしまだこの段階では、父親は具体的な施策の対象ではなかった。
 第3区分の政策では、父親の子育てが積極的に取り組まれていき、今ではよく耳にする「イクメン」という言葉が流通し始めた。2010年に育児・介護休業法に盛り込まれた「パパ・ママ育休プラス」は、両親ともに育児休業を取得する場合に、休業期間を延長できるという制度である。これにより、より父親の積極的育児参加への具体的な施策が明確になってきた。
 また、2021年には、育児・介護休業法が更に改正され、男性の育休取得の柔軟な枠組み創設や育休取得状況公表の義務付けなど、より父親の育休に寄り添った法改正となった。
 2022年4月には、新たに改正された育児・介護休業法が施行された。より育児休業を取得しやすい雇用環境の整備がすすめられた。内容としては、  
  • 一人の子に対し分割して2回まで取得可能、また男性は生後8週間以内なら2回育休を取得できるため、合計4回取得可能になった。  
  • 有期雇用労働者が育休を取得するための条件①雇用期間が1年以上である②1歳6か月までに契約が満了しないこと→①の撤廃  
  • 本人や配偶者からの妊娠・出産の申し出があった場合に、企業側が育休制度について周知をし、取得するかどうかの意向を確認することの義務  
  • 従業員が1000人を超える企業は、育休取得を公表しなければならない
     最近では、「週休3日」を取り入れようとする声も高まってきている。これは、ワークライフバランスを重視するようになったことが背景にあり、希望する労働者が週休3日で働ける制度である。実際に既に取り入れている企業もあるが、普及は進んでいない。これが取り入れられると、出産の時期に限らず、子育てに時間を割けるようになるのではないか。

    第3章 男性育児参加の現状

     これだけ様々な政策が施策されてきたにもかかわらず、その現状は、まだ十分とは言い切れない。以下、厚生労働省がまとめた資料に基づいて現状分析を行う。
     日本の6歳未満の子どもを持つ家庭の夫の平均的な家事・育児関連時間全体は1時間で、これは米、英と比較すると1時間以上短い。しかし、そのうち育児の時間は、他国と比べて大差がないという結果になっている。このことから、日本の父親は大部分の家事を母親に任せていることがわかる。これに関連して、夫の家事・育児時間が長いほど妻の継続就業割合が高く、第2子以降の出生率も高い傾向にある。第2子の出生率は、6時間以上家事・育児をする家庭は、全くしない家庭と比較して、70%以上もその結果に差がある。
     令和元年における育児休業取得率は、女性が83%であるのに対し男性は7.48%と、やはりその差は歴然としているも、着実に数字を伸ばしてきている。育児休業の取得希望者は、全体の約20%であるのに対し、制度を利用したかったがしなかった人はそのうちの37.5%である。もしこの人たちが取得していた場合、取得率は50%を超えることになるため、この37.5%に着目する必要があると言える。男性社員が、育休を利用しなかった理由は主に3つである。
     一つ目が、育休制度が整備されていなかったこと。二つ目が、収入を減らしたくなかった。三つめが、育休取得をしづらい雰囲気だったことである。これらはいずれも全体の20%以上を占める結果となった。また、取得をしづらい要因の一つとして、会社からの働きかけが不足していることが考えられる。会社からの働きかけが特になかったと答えた男性社員は、女性社員の2倍にあたる約65%であった。このことから、企業の男性育休への関心が低いことがわかる。

     男性の育休取得率は、0.12%(平成8年度)から12.65%(令和2年度)へと上昇傾向にあるものの、未だ1割程度に留まっているのが現状である。また、海外の取得状況と比較すると、日本は圧倒的に低い。このことから、育休期間の制度保障はあっても、実際の取得中の家計への不安が大きいのではないだろうか。 

    第4章 企業事例

    1. 江崎グリコ
      2020年1月から「Co育てMonth」を導入し、育児に専念する休暇を1か月取得することを必須化した制度を実施している。男性が取得できる5日間の育休では足りないという声から、0~6か月の子どもを持つ社員を対象とした、1か月間有給扱いの休暇をとることが出来る。これは、社員の柔軟な働き方を促すことで、それぞれの人生をデザインする習慣をサポートすることを目標としている。 現在では、男性社員の育休取得率100%となっている。
    2. 積水ハウス
      キッズ・ファースト企業を目標に、2018年9月から、男性社員1か月以上の育休完全取得(特別育児休業制度)を推進している。こちらも、現在の男性社員の育休取得率100となっている。 男性育休白書では、男性の家事・育児力の指標を設定し、それに沿って収集したデータをランキング化し、現状把握を行っている。また、「家族ミーティングシート」を作って育休取得後の家庭内での役割分担について話し合う時間設定の推進や、その結果を基に育休取得計画書を作成するというような、企業が家庭に協力的な姿勢も見せている。

    第5章 中小企業における育休政策と課題

     第4章の企業事例を踏まえ、大企業では、男性育休の普及が浸透してきていることを感じた。これは、国からの義務命令の効果ととらえて良いだろう。
     そこで、企業規模に区別をつけて調べた。その結果、中小企業では育休が普及している主な事例がないことに気づいた。中小企業に対する国の政策は、下記である。
    1. 働き方改革推進支援助成金

      「働き方改革推進支援助成金」:出所<厚生労働省>(2022/10/11)より

       育休制度を充実させるための資金援助として、上記の条件を満たす企業に対して、取組の実施に要した経費の一部を、成果目標の達成状況に応じて支給するものである。
    2. 出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金
      男性労働者が育児休業や育児目的休暇を取得しやすい職場風土作りに取り組み。子の出生後8週間以内に開始する連続14日以上(中小企業は連続5日以上)の育児休業等を取得した男性労働者が生じた事業主への助成金で最大72万円が支給される。

    これらの政策が着目している点として、中小企業の整備を整えるための資金不足や、その他に代わる人がいないという人員不足が考えられる。今後は、この点を更に追究していく予定である。

    第6章 今後の方針

  • 中小企業の育休事例を調べ、中小企業の実態を知る
  • 子どもの年齢層など、対象範囲を絞って数値目標をたてる

    参考文献


    Last Update: 2023/07/31
    ©2021 Tamai Kiki. All rights reserved.