「生命重視型」ペット業界改革

−プラットフォームビジネスから政策へ−

早稲田大学社会科学部4年
上沼ゼミV 藤本彩花

愛犬の写真 筆者撮影 2022年8月30日


章立て


第1章 はじめに


 ペット犬について考える上で、そもそもペットが私たち人間にとってどのような存在であるのかを歴史の観点から整理する。ペットの歴史は、人間が文明を築く前、犬の祖先であるオオカミを家畜化したことから始まった。当時のオオカミは、狩猟補助をしたり人間や家畜を野生動物から守ったり侵入者から守ったりする、いわゆる番犬のような立ち位置であった。人間の集団に利益をもたらすための、「道具」に近い存在である。そして「道具」であるオオカミも、特定の飼い主の元には住み着かなかった。家のソトで本能のまま自然に繁殖し、エサ確保の「手段」として人間を利用する。「道具」と「手段」というWINWINの利害関係で、元来人間とペットは関係を構築してきた。こういったオオカミの家畜化が成功した時期については、現在も盛んな議論が交わされ結論には至っていないがとにかく長い間、人間と犬が生活のために共生してきたのである。

黒岩岩陰遺跡にて発見された犬骨


 日本においても、縄文時代の遺跡である黒岩岩陰遺跡(愛媛県久万高原町)にて、2体の犬骨の埋葬が発見されている。2匹とも生前に歯牙の一部を失っていたことから、猟犬として利用されていたと推測される。つまり、古来日本においても、犬は人間の集団に利益をもたらす「道具」として働き、信頼関係を築いていたことが窺える。こういった犬を「道具」として利用する利害関係は、番犬という形で昭和まで続いた。番犬は、不審者の接近・侵入を防ぐ防犯のための役割を担う。昭和時代までは、家のソトに犬小屋を設け、犬の棲家と人間の棲家は区別された。人間にとって犬は防犯の「道具」であり、犬は人間を食事確保の「手段」として使う。そういった利害に基づく信頼関係の中で人間と犬がお互いに求めるのは生きていくための利害関係のみであり、お互いの領域には踏み込まない。ペット創造期から昭和まで、犬は家のソトで飼われ、人間と犬は共存しつつも独立していた。 しかし近年、長く続いた「犬=道具」の価値観が大きく変容しつつある。現時点で、ペット犬を番犬という「道具」として、家のソトで飼っている人はどれほどいるであろうか。

「令和6年全国犬猫飼育実態調査」一般社団法人ペットフード協会



 最新のデータによると、屋外を中心とした飼育は全体のたった5.6%に留まる。ここから見出されるのは、ペット犬を家のソトで飼うべきだという従来の価値観が、家のウチで飼うべきだという価値観に変化したことである。こういった変化は、「犬=道具」といったソト的な見方が、「犬=家族」といったウチ的な見方に変容していることに起因する。日本国内の成人に対して行われた「生活に最も喜びを与えてくれること」のアンケート調査(一般社団法人ペットフード協会)によると、「ペット」の項目は「家族」についで2位に入選した。今や人間は、ペットを利害関係を結ぶ「道具」ではない。癒しや安らぎを与えてくれる愛玩動物としてのペット時代に突入している。また、三菱UFJリサーチ&コンサルティング研究員である北 洋祐(三菱UFJリサーチ&コンサルティング研究員)は、以下の通り言及をしている。
  「大都市への人口集中も、ペットの家族化に拍車を掛けている」
  「住宅が狭く、交通量が多い都会の住宅事情から、ペットの小型化と室内飼育化が進んでいます。ペットと室内で過ごす時間が増えれば、わが子のように自然と愛情が増すものです」
 また、こういった価値観の変化は、経済領域においても定量的に観測される。人々がペットに幸せに生きてほしいと考えるようになったことで、一匹あたりのペットにかける単価が増加している。

「ペット・用品及び関連サービスへの支出の推移」経済産業省



 上記のデータからは、ペットフードやペット用品を中心に出費が右肩上がりであることが読み取れる。つまり、犬に対してお金をかける人が年々増えていることが窺える。著しいのは、ペット犬に定期健康診断を受診させる家庭は55%を占め、2016年の調査開始以来で約16%も増加している(一般社団法人Team HOPE)。
 こうして犬は「愛玩対象」としての地位を確立しつつある。この価値観の変化に伴って、世間では命の重みを意識する声が高まっている。そこで一際議論の中心となっている社会問題が、まさに殺処分問題である。現在、年間2,424件(2023年度)の犬が殺処分されており、この現状は社会的課題として深刻である。殺処分とは、「人間に危害を及ぼすおそれのある動物、または不要となった動物を殺すこと」と定義される行為で、動物愛護管理法にて条例が定められている。しかしながら、人間にとって利益にならなかったり、利用価値がないと判断されたりした個体を消す作業は、犬を「道具」としてみなす昭和以前の価値観に則っている。つまり、この制度は、犬を愛玩対象や人間のパートナーとみなす現在の価値観には、適合していない。そのため、本研究では、この殺処分を将来的に解決する政策を考察する。

第2章 背景と課題


 なぜこういった殺処分問題が発生しているのか。その背景には三つの要素が関係している。第一に、保護犬の譲渡が進まないことである。保護犬の約2割が新たな飼い主を見つけられない状況が続いている。迷子犬を除けば、保護犬の受け皿が不足していることや、譲渡の仕組みの未整備が問題を深刻化させている。

ペット業界のイメージ図(筆者作成)


 第二に、ペット業界の古い構造が挙げられる。現在のペットショップ中心の販売形態では犬が「商品」として扱われ、命の尊重が欠如している。また、悪質なブリーダーによる過剰繁殖やアフターケアの欠如もペット業界全体の問題を象徴している。 第三に、飼い主教育の不足である。飼い主が犬の特性や適切な飼育方法を十分に理解しておらず、結果として飼育放棄に至るケースが後を絶たない。 これらの課題は、単にペット業界の問題に留まらず、社会全体の動物福祉意識や命に対する価値観にも影響を与えている。これらの問題に対応するため、新しいビジネスモデルや政策の提案が求められる。

第3章 提案の目的


 本研究の目的は、日本における犬の殺処分問題に対する具体的な解決策を提案することである。現在、保護犬の約2割が新たな飼い主を見つけられない状況が続いており、これは保護施設の不足や譲渡システムの未整備が主な原因である。この問題を解決するためには、ペット業界全体の構造改革が不可欠である。 本提案では、保護犬を新しい飼い主に適切にマッチングする新しいビジネスモデルを提示する。このモデルは、オンラインプラットフォームを活用し、飼い主のライフスタイルや希望条件に合致する犬を紹介するものである。また、飼い主への飼育ガイド提供や相談サービスを通じて、飼育放棄を防ぐためのアフターケアを充実させる。 さらに、ペットショップに代わる「新規ペットのマッチング市場」を開拓することを目指している。この市場は、命を尊重する新しいペットビジネスのあり方を示し、保護犬の命を救うだけでなく、動物福祉の向上にも寄与するものである。最終的には、日本における殺処分ゼロの実現を目指し、社会全体の命に対する価値観を再定義する一助となることを目標としている。

第4章 現状分析?殺処分問題の根本原因?


 殺処分問題の根本原因は多岐にわたり、特に以下の点が挙げられる。 第一に過剰繁殖である。無計画な繁殖により需要を超える数の犬が市場に供給される結果、売れ残りの犬が増加し、殺処分に至るケースが多い。 第二に、不適切な飼育である。飼い主が犬の特性や飼育方法を十分に理解せず、飼育放棄に至る場合が多い。 第三に、保護犬の受け皿不足が問題を深刻化させている。保護施設のキャパシティが限られているうえ、譲渡の仕組みが十分に整備されていないため、多くの保護犬が新しい飼い主に出会えず殺処分される。このような現状を解決するためには、ペット業界の構造改革や飼い主教育の推進、保護施設の支援体制の強化が不可欠である。

第5章 現状分析?ペット業界の構造的問題?


 ペット業界の構造的問題は、主に以下の3点に集約される。第一に、ペットショップ中心の販売構造である。ペットショップでは犬が「商品」として扱われ、命の尊重が欠如している。第二に、アフターケアの不足である。飼い主に対する飼育ガイドラインや教育が十分でなく、結果として不適切な飼育が増加し、飼育放棄を引き起こしている。第三に、情報の透明性の欠如である。繁殖業者や販売過程における情報が消費者に十分に提供されていないため、消費者は購入する犬の出自や健康状態を把握しづらい。このような業界構造は犬の福祉を損なうだけでなく、殺処分問題を助長する一因となっている。この問題を解決するためには、業界全体の構造改革が必要不可欠である。

第6章 企業による新サービスの提案と概要


 犬の殺処分を減らすため、企業活動として革新的なオンラインプラットフォームを構想している。本プラットフォームは、保護犬と新しい飼い主を結びつけるマッチングサービスを中心に据えるものである。飼い主のライフスタイルや居住環境、希望条件に基づき、最適な犬を推薦する仕組みを提供する。また、アフターケアサービスも充実させる。新しい飼い主への飼育ガイドを提供するだけでなく、オンライン相談サービスを通じて飼い主の不安を軽減する体制を整える。さらに、動物行動学の専門家と連携したトレーニングプログラムにより、飼育の質を向上させる。加えて、ペットヘルスケアの分野では、獣医師との提携を通じた健康管理や予防医療を提供することを目指す。このような包括的なサービスにより、保護犬の譲渡を促進し、殺処分の削減と動物福祉の向上を実現するプラットフォームを構築するものである。

第7章 新サービスの収益モデル


収益モデル (筆者作成)



 犬の殺処分を減らすためのプラットフォーム構想は、譲渡促進の仕組みと収益モデルを組み合わせた持続可能な事業モデルである。このプラットフォームは、保健所や動物愛護団体と連携し、保護犬の情報を共有する仕組みを構築する。これにより、保護犬と飼い主候補を効率的に結びつけることを目指す。また、地域ごとに譲渡イベントを開催し、保護犬の新しい飼い主への適切なマッチングを促進する。 収益モデルとしては、まず保護犬と飼い主のマッチングにかかる手数料を設定する。さらに、アフターケアサービスの契約料を収益源とする。このサービスでは、飼育ガイドの提供やオンライン相談、トレーニングプログラムなど、飼い主の負担を軽減する内容を盛り込む。加えて、トレーニングや健康管理を含むサブスクリプション型サービスを提供し、継続的な収益を確保する。このように、動物福祉の向上と企業の持続可能性を両立させる仕組みである。

第8章 政策連携と期待効果


 上記で述べてきた通り、日本のペット業界は現在、多くの構造的課題を抱えている。ペットショップを中心とした販売構造、無計画な繁殖、飼育放棄、そして保護施設のキャパシティ不足といった問題が絡み合い、年間数千頭の犬が殺処分されている。この状況を改善するためには、政府と企業の連携による政策提案が不可欠である。特に、ペット販売規制の強化、補助金制度の導入、飼い主教育プログラムの義務化を柱とする政策を推進し、企業の役割を最大限に活用することが求められる。さらに、これらの政策による社会的効果として、殺処分の大幅な減少、ペット業界の構造改革、そして動物福祉意識の向上が期待される。
 まず政策連携が必要な領域として、ペット販売規制の強化が挙げられる。現行のペットショップは、犬を「商品」として扱う販売方式を主としており、動物の命を軽視する傾向がある。この状況を改善するためには、ペットショップでの犬の販売を制限し、登録ブリーダーや保護施設からの譲渡を促進する法的枠組みを構築する必要がある。具体的には、販売業者への登録制度を設け、基準を満たさない業者には許可を与えないような規制強化を行うべきである。また、犬の繁殖数に関する制限を設けることで、無計画な繁殖を防止し、需要と供給のバランスを保つことが可能となる。このような規制は、短期的には業界の反発を招くかもしれないが、段階的な導入と啓発活動を通じて、持続可能なペットビジネスモデルを実現することができる。
 次に、補助金制度の導入である。保護犬を引き取る飼い主や、保護施設と連携して譲渡活動を行う企業に対して補助金を提供することは、譲渡促進の大きな推進力となる。例えば、新たに保護犬を受け入れた飼い主に対しては、初期費用の一部を補助する制度を設けることで、飼い主の経済的負担を軽減し、譲渡活動を活発化させることが可能である。また、保護施設と連携している企業には、譲渡イベントの開催やオンラインプラットフォーム運営に必要な資金を助成することで、事業の継続性を支援することが重要である。このような補助金制度は、保護犬の受け入れを経済的に後押しするだけでなく、企業が動物福祉に積極的に関与するインセンティブともなる。
 さらに、飼い主教育プログラムの義務化が求められる。多くの飼い主が犬の特性を理解せず、適切な飼育ができないことが飼育放棄の主因となっている。この問題に対応するためには、政府と企業が共同で飼い主向けの教育プログラムを実施する必要がある。具体的には、新たに犬を迎え入れる飼い主に対し、飼育ガイドラインの提供や講習の受講を義務付ける仕組みを導入すべきである。加えて、オンライン相談サービスや専門家によるトレーニングプログラムを活用することで、飼い主が抱える不安を軽減し、犬との適切な関係構築をサポートすることができる。このような教育プログラムは、飼い主の知識やスキルを向上させるだけでなく、動物福祉意識の向上にも寄与するものである。
 これらの政策提案を実行に移すことにより、期待される社会的効果は多岐にわたる。まず、殺処分数の大幅な減少が挙げられる。保護犬の譲渡が進むことで、保護施設の負担が軽減され、結果として殺処分に至る犬の数を大幅に削減することが可能となる。また、ペット業界全体の構造改革が促進される。命を尊重する新しい市場モデルが確立されることで、業界全体が持続可能な方向へとシフトすることが期待される。さらに、動物福祉意識の向上が図られる。これにより、飼い主や一般市民の意識改革が進み、動物を命ある存在として尊重する社会が形成されるであろう。

第9章 実施上の課題と対策


「政策連携と期待効果」に基づく施策を実施する上では、さまざまな課題が存在する。これらの課題を適切に認識し、実効性のある対処方法を講じることが、政策の成功にとって不可欠である。本提言では、以下の3つの主要課題を挙げ、それぞれの対処方法を提示する。

1. 法規制に対する業界の反発


 ペット業界において、ペット販売規制の強化は、業界全体の利益構造に大きな影響を与える。そのため、特にペットショップを中心とした事業者からの反発が予想される。この反発は、規制強化が業界の利益縮小や事業継続の困難化につながると考えられるためである。具体的には、ペットショップの売上減少や、繁殖業者における収益悪化が懸念される。この課題に対処するためには、業界との協議と段階的な導入を行うことが重要である。まず、業界団体と政府の間で協議の場を設け、規制の内容や目的について丁寧に説明し、理解を促進する必要がある。また、ペットショップや繁殖業者に対して、新たなビジネスモデルへの移行を支援する政策を打ち出すべきである。具体的には、保護犬の譲渡事業への参入支援や、ペット用品販売へのシフトを支援する補助金制度を設けることで、業界の負担を軽減しつつ、規制強化を進めることができる。 さらに、規制を段階的に導入することで、業界が新たなルールに適応する時間を確保することができる。例えば、初年度は販売可能な犬種や頭数に制限を設け、数年をかけて全面的な規制へと移行する計画を立てることで、反発を最小限に抑えることが期待される。

2. プラットフォームの認知度・信用度の向上

 保護犬の譲渡を促進するために、オンラインプラットフォームを活用することは有効であるが、その認知度や信用度の低さが課題となる。多くの飼い主候補がプラットフォームの存在を知らない、またはその信頼性に疑念を抱いている現状では、譲渡の促進に限界が生じる。認知度と信用度を向上させるためには、まず広報活動を強化することが必要である。具体的には、SNSやメディアを活用した情報発信を行い、プラットフォームの利用方法や譲渡の流れを分かりやすく説明する。また、自治体や動物愛護団体と協力し、地域イベントや学校教育の場を通じてプラットフォームの存在を周知する取り組みも効果的である。
 信用度を高めるためには、透明性の確保が鍵となる。譲渡対象の犬の健康状態や性格、過去の経歴について詳細な情報を提供する仕組みを整えるべきである。また、譲渡後のフォローアップ体制を充実させることで、飼い主と保護犬の適合性を向上させ、プラットフォームへの信頼を高めることが可能である。 さらに、第三者機関による評価制度を導入し、プラットフォームの運営状況やサービス品質を定期的にチェックする仕組みを設けることで、利用者に対する安心感を提供できる。

3. 飼い主教育の実効性確保


 飼い主教育プログラムは、犬の適切な飼育と飼育放棄防止のために重要であるが、その実効性を確保することが課題である。具体的には、プログラムの内容が飼い主のニーズに合致していない場合や、受講の負担が大きすぎる場合、実施効果が限定的となる恐れがある。この課題を克服するためには、プログラムの内容と提供方法を見直す必要がある。まず、プログラムの内容をシンプルかつ実用的なものにすることが重要である。例えば、犬の基本的な世話やしつけ方法、動物福祉の基本的な考え方について、短時間で学べるカリキュラムを提供する。また、オンライン講座や動画教材を活用することで、時間や場所に制約されることなく受講できる環境を整える。 さらに、受講者の意欲を高める仕組みを取り入れることが有効である。例えば、プログラム受講後に修了証を発行し、譲渡時の特典として活用できる仕組みを設けることで、飼い主候補の参加意欲を高めることが期待される。 また、プログラムの実効性を評価する仕組みを構築することも必要である。具体的には、受講者に対するアンケート調査や、譲渡後の飼育状況を追跡することで、プログラムの効果を継続的に検証し、改善を図るべきである。

第10章 結論と行動計画


 結論として、政府と企業の連携による政策提案は、殺処分問題の根本的な解決に向けた重要な一歩である。ペット販売規制、補助金制度、飼い主教育プログラムの3本柱を中心に、具体的な施策を推進することで、保護犬の命を救い、動物福祉を向上させる持続可能な社会を実現することが可能である。日本におけるペットビジネスの未来は、政策と企業の協働により切り拓かれるものであり、全ての関係者がその責務を果たすべきである。
 私の政策提言は、主にペット業界における飼育放棄や動物福祉の向上を目指すものであり、具体的な目標として次の3点が挙げた。
   1. ペット販売規制を強化し、利益重視の繁殖を抑制すること
   2. 保護犬の譲渡を促進するため、オンラインプラットフォームを整備すること
   3. 飼い主教育を強化し、適切な飼育意識を広めること

1. ペット販売規制の強化と、利益重視の繁殖抑制


 これらの提言を実現するためには、具体的な政策連携と段階的な施策の実施が必要不可欠である。以下では、提言の内容を詳細に説明し、それをもとにした結論と今後の行動計画を示す。
 利益重視の繁殖業者やペットショップの存在が、飼育放棄や動物虐待の温床となっていると指摘された。特に、過剰繁殖による健康問題を抱えたペットの流通や、購入後の飼育放棄が深刻な問題である。これを防ぐため、販売規制の強化が提言されている。具体策として、繁殖業者に対する認可制度を導入し、過剰繁殖を防ぐための基準を厳格化する。また、ペット販売店舗には購入希望者の資格審査を義務付け、軽率な購入を抑止する仕組みを設けることが挙げられる。

2. 保護犬譲渡の促進とプラットフォームの整備


 動物愛護団体が行う保護犬譲渡活動の効率化が求められている。特に、譲渡対象の犬と適切な飼い主候補を迅速にマッチングさせるためのオンラインプラットフォームの活用が提案された。 このプラットフォームでは、譲渡対象の犬の詳細情報(健康状態や性格、過去の経歴など)を閲覧できる仕組みを整備する。また、譲渡希望者が飼育能力や意欲を自己申告する評価システムを導入することで、ミスマッチを防ぐ狙いがある。さらに、プラットフォームの信用度向上のため、第三者機関による運営評価制度を導入し、透明性を確保することが提案されている。
 短期的には、保護犬譲渡プラットフォームの試験運用を行い、利用者の意見を基にシステムを改善する。また、飼い主教育プログラムをオンラインで提供し、その効果を検証する。中長期的には、ペット販売規制を段階的に強化し、業界全体の意識改革を促進する。さらに、教育プログラムの受講者数を増やし、地域社会での保護犬譲渡活動を活性化する。保護犬領域で継続した利益が見込めたタイミングで、新規ペット購入に対するマッチングサービスへ領域を拡大し、ペットショップを中心とした業界を改革することを目指す。

3. 飼い主教育の強化


 適切なペット飼育を促進するためには、飼い主に対する教育が不可欠である。プレゼンテーションでは、飼い主教育プログラムを導入し、ペット購入前や譲渡前に受講を義務付けることが提言された。 教育プログラムの内容としては、以下が挙げられる。
   ? ペットの基本的な世話方法
   ? 動物福祉に関する知識
   ? 緊急時の対応方法
 また、プログラムの受講はオンラインで可能とし、地域イベントや学校教育と連携することで、幅広い世代に対して適用できる仕組みが構想されている。
 これらの政策提言を実行に移すには、政府、業界、市民がそれぞれの役割を果たし、連携することが求められる。政府は規制の整備や補助金の提供を通じて政策を主導し、業界は保護犬譲渡活動への参加やペット用品販売事業への転換を進めるべきである。市民もまた、ペットを迎える際の責任を認識し、飼育に関する知識を積極的に学ぶ姿勢を持つことが求められる。
 結論として、これらの施策を通じてペット業界全体の構造改革が進むとともに、動物福祉意識の向上が図られることが期待される。具体的な行動計画として、短期的にはオンラインプラットフォームの試験運用や教育プログラムの提供を開始し、中長期的にはペット販売規制の段階的導入と教育プログラムの普及を進めるべきである。これらの取り組みにより、持続可能なペット共生社会の実現が可能となるであろう。


参考文献・リンクページ


Last Update: 2025/01/25
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