(1)昭和52年の基本構想の策定とその後の区の取組
基本構想は、その地域における総合的・計画的な行政運営を図るために、議会の議決を経て定めるものです。特別区は、昭和49年の地方自治法改正により、市町村と同様に、基本構想を策定し、それに即した行政運営を行うことが義務付けられました。 練馬区は、昭和22年、板橋区から分離独立して23番目の特別区として誕生しました。一番新しい区ということもあり、戦後、人口が急増する中、他の特別区に比べて下水道や道路など都市基盤の整備が立ち遅れ、行政施設の水準も低く、いわゆる「練馬格差」と呼ばれる状況がありました。 こうした中で、区独立30周年に当たる昭和52年に、練馬区基本構想を策定しました。 以降、区は、区民やさまざまな団体と力を合わせ、都市基盤や行政施設の整備、各種区民サービスの充実などを進め、この間の取組により行政水準は大きく向上しました。(2)新たな基本構想策定の必要性
しかしながら、時代の経過に伴い、治安や災害に対する不安感の増大、少子高齢化、地球環境問題など、区政が対応を求められる課題が新たに生じています。また、区民の暮らしの基盤となる地域コミュニティについても、人と人とのつながりの希薄化などが指摘され、そのあり方が問われています。 そうした中で、わが国は世界同時不況により景気の急速な後退に陥り、区財政は困難な状況が続くものと予想されます。このような厳しい状況にあって、増大する行政需要に対応していくためには、区だけでなく、区民や地域の団体、事業者などと役割分担しながら、効果的・効率的に公共サービスを提供していく、協働を柱とした区政経営を推進することが、これまでにも増して強く求められています。 一方、特別区制度改革や地方分権の進展など、区政を取り巻く状況も大きく変化しています。現在、第二期地方分権改革や都区のあり方の検討など、地方自治や特別区にかかわる見直しが進められています。区は、区民に最も身近な「地方政府」としての責務を果たしていけるよう、力量を一層高めていかなければなりません。
練馬区は、70万人以上の区民が暮らす、全国有数の人口規模をもつ大都市となりました。今後、区が大都市の力を発揮し、困難な局面を乗り切りつつ着実な発展を遂げ、区民の幸せを実現していくための区政運営の指針として、新たな基本構想を策定することとしました。
基本構想の位置付け
基本構想は、区民と区が、区政のめざす姿を共有し、ともに手を携えて着実にこれからの練馬区を築いていくための指針となるものです。同時に、区の計画体系においては、最上位に位置する区政運営の基本的指針であり、施策について総合的に定める長期計画の根幹をなすものです。基本構想の目標年次は、区民が実現可能性・実効性を実感できる構想とするため、練馬の未来を見通しつつ、概ね10年後の平成30年代初頭とします。 練馬区のめざす姿の実現に向けて、区民の参画・協働のもと、政策分野を越えて横断的に取り組む重要施策の方向性を示すものとして、三つの「未来の練馬を区民とともにはぐくむ」視点を設定します。 @ 豊かなみどりを守り、増やし、活かす A まちの魅力を引き出し、活力を高める B 未来を拓く人の学びや活動を支援する
A 「まちの魅力を引き出し、活力を高める」視点 区民や事業者が培ってきた産業、技術、文化、芸術の資産や、便利で快適な交通・都市環境などの多彩な資源を活用して、区民・事業者・区の協働により、まちの新たな活力を創出します。住み、育ち、働き、学び、訪れ、憩い、集う場所として魅力のあるまちづくりを進めます。 特に、農業やアニメなど練馬区の特色ある産業や、区内の文化・芸術資産のもつ力を再発見し、輝かせ、発信することにより、地域社会全体を元気にしていきます。<2-1 農プロジェクト> 長い歴史と風土がはぐくんできた練馬の農業は、練馬区のイメージを特徴付ける産業です。また農地は、農産物を供給するだけでなく、区民の暮らしを豊かにする多面的機能をもっています。都市における農の重要性を練馬区から発信し、全国のリーダーとして都市型農業を振興していきます。
(1) 魅力的な都市型農業を振興する 大消費地に立地するメリットを活かし、食の安全や都市生活者のニーズにこたえる地産地消を、農業者や農業団体との協働により推進します。農業者とふれあいながら農の実りを体感できる農業体験農園や観光農園、農業イベントなど、全国のモデルとなるような都市型農業の魅力的な取組を展開します。
(2) 都市農地保全に向けた制度の見直しを働きかける 区民にとって貴重な農地の保全に向けて、都市農地の特性を踏まえた法制・税制の見直しを、他自治体と連携して国等へ強く働きかけます。
(3) 農のあるまちづくりを推進する 都市の農業・農地がもつ多面的機能が一層発揮され、農業・農地と都市が共存する「農のあるまちづくり」を進めます。<2-2 アニメプロジェクト> 日本アニメ発祥の地としての半世紀を超す長い歴史と、わが国最大の集積をもつ練馬区のアニメ産業を育成・強化し、区全体の産業振興や雇用創出へつなげるとともに、練馬区発の文化として広く世界に発信します。
(1) 国際競争力をもつ産業へ育成する 練馬区のアニメ産業集積を活かして、世界をリードする国際競争力をもつ産業へと育成します。企業の集積に向けた製作環境の充実や、アニメ技術の継承と向上を図る人材育成、知的財産としての活用などを進め、その牽引力により、雇用の創出をはじめ地域経済全体の活性化を図ります。
(2) アニメ文化を通して練馬の魅力を高める アニメ文化を区の内外に発信することで練馬の魅力をさらに高めていきます。アニメを区のさまざまな施策展開に活用し、アニメを核として区民の地域への誇りを醸成します。
3 にぎわいとやすらぎのあるまちを創る 区民生活と産業分野 区民の多様な活動を活性化し、地域の人々のふれあいを通したつながりをつくります。また、地域の特性を活かした産業の振興により、まちのにぎわいを創出します。さらに、区民と区が力を合わせて、安心して生活できる地域づくりを進めます。3-1 多様な地域活動を活性化し、やすらぎのある地域社会をつくる 地域で暮らす多様な区民が町会・自治会やボランティア、NPOなどの活動へ積極的に参加し、区民やさまざまな団体が連携して人と人とのつながりのある地域コミュニティをつくることができるよう、支援します。 だれもが生涯にわたって、学びたいとき、活動したいときに、さまざまな学びや文化・スポーツ活動に参加し、自らを高めながら人や地域とのつながりを深められるように、図書館やスポーツ施設等の機能を充実するなど、生涯学習環境を拡充していきます。また、練馬区の文化を継承し発展させ、新たな文化の創造を図ります。 さまざまな立場の区民が差別なく尊重され、また、男女が社会の対等な構成員として、成果と責任を分かちあえる社会づくりを進めます。
3-2 経済活動を活発にし、にぎわいを創出する 区内産業の振興により、雇用の機会を創出するなど地域経済を活性化し、地域の活力を高めます。中小企業の支援を通じ、元気な区内企業を育成し、特色ある地域産業のさらなる発展をめざします。 魅力的な商店街づくりを支援するとともに、地域の資源を活かしたまち歩き観光を推進します。 都市型農業を振興し、区民にとって多面的機能をもつ都市農地の保全を進めます。 消費生活に関する相談や情報提供などの充実を図ります。
3-3 安全で安心な区民生活を支える態勢を整える 自助・共助・公助の認識の下で、区民、地域の団体等と区が連携を図りつつ、危機を未然に防止し、災害・犯罪等の被害を最小限に抑える態勢をつくります。
練馬区地域共存型アニメ産業地区制活性化計画このアニメ産業集積を重点産業として戦略的に強化することにより、地域経済全体に波及効果をもたらし、区内産業の活性化を図るとともに、区民の皆さんの地域への誇りを醸成することを目的として、平成20年9月に「練馬区地域共存型アニメ産業集積活性化計画」の策定を開始しました。 その後、学識経験者、アニメ事業者、区関係職員等を委員とする検討会議での議論を踏まえ、活性化計画(素案)をとりまとめた後、11月から12月にかけては、区民の皆様や事業者の方から素案に対するご意見をいただきました。 そして最終的に、平成21年1月末に本活性化計画を策定いたしました。計画期間は、平成21年度(2009年度)から平成26年度(2014年度)までの6年間です。 今後は、本計画に基づき、事業者や企業団体等の自主的な取り組みを支援し、アニメ産業集積の強化と区内産業全体のさらなる発展、そしてアニメ文化の普及を図ってまいります。
国や東京都におけるコンテンツ産業支援
- 国が新産業創造戦略において、コンテンツ産業を先端的新産業分野として支援
- 日本貿易振興機構(ジェトロ)の支援による日本企業の進出
- 東京都産業振興基本戦略で、コンテンツ産業を重点産業に位置づけ
一方で練馬区のアニメ産業は以下の理由で難航していると考えられる。
厳しさが続く練馬区の産業そこで、練馬区をアニメで活性化する方向性が検討されている。
- 事業所数 10年で約3,850事業所の減少。H8年25,412事業所⇒H18年 21,553事業所
- 住宅共存型産業の育成が急務
集積活性化の方向性
- 企業集積に向けた製作環境の充実
- 商店街を始め、地元経済への波及効果の実現
- アニメ文化を区の内外に発信し、区民の誇りとする
集積活性化のための事業は次の通りである。
集積活性化事業
- アニメ文化普及事業
ねりたんアニメカーニバル
ねりたんアニメキャラバン(出前講座)
アニメアーカイブスの製作
(仮称)ふるさと文化館アニメコーナー
練馬アニメモニュメントの整備
アニメ製作や作品を紹介するアミューズメント施設整備支援
アニメ製作現場の見学コース整備- 地域産業連携事業
商店街事業におけるアニメの活用
鉄道事業者等との連携による地域活性化
練馬区独自アニメキャラクターの開発
また東京新聞にはこのような形で取り上げられた。
多言語によるアニメサイトの立ち上げなど、区内のアニメ産業活性化のための国際的な戦略を打ち出した練馬区は、新年度予算案の目玉として「アニメ」を大きく掲げた。志村豊志郎区長は「アニメは素晴らしい社会資本。区の発展のため区がかかわることによって戦略的に強化していきたい」と意気込みを語った。(比護正史)日本アニメ発祥の地の練馬区は、昨年十一月に「アニメのまち練馬区」を宣言。新年度予算案でアニメ産業活性化事業として、前年度当初比で三倍近い約一億六百万円を計上し、アニメに重点を置いた街づくりを進める明確な方向性を示した。 区は、区内に九十社以上あるアニメ制作関連会社の定着とさらなる誘致を進める一方、国際ビジネス展開を支援する方針だ。 国際アニメ映画祭を開催するフランス・アヌシー市との産業提携はその一つ。志村区長は「四月の早い時期に(産業提携の)協定を結びたい」とした。 また、名誉区民で漫画家の松本零士さんの「銀河鉄道999」のキャラクターを印刷した住民票の発行については、「新しいスタイルの住民票を作っていきたい」と話した。 今月(十一月)二十八日、区のアニメ産業活性化の取り組みが、都の助成事業に認定される追い風も。こうした点を踏まえ、志村区長は「アニメを練馬区の地場産業にしていき、国際拠点にしていく」と力強く語った。
つまり、練馬区ではアニメ産業の活性化による具体的計画が打ち出され、国内だけでなく、国際ビジネス展開を支援していく方向性が示された。またこの取り組みは都の助成事業に認定され、順調なスタートをきっている。
東京都による練馬区のアニメ事業に対する支援は以下の通り。(以下東京都HPより抜粋)
東京都の20年度新規事業<<<地域の特性を活かした産業集積の実現に向けて>>>
「創造的都市型産業」集積創出助成事業
区市町村が策定する「地域産業振興計画」の承認 第1号を行いました
平成21年1月28日
産業労働局東京都では「10年後の東京」計画が目指す「創造的都市型産業」の育成や集積の創出を図るため、今年度から、「創造的都市型産業集積創出助成事業」を開始しました。この事業は、東京都と考え方を共有し、地域の特性や資源を活かしたきめ細かな施策を講じることにより、地域の産業振興に主体的に取り組む区市町村を支援するものです。 事業開始にあたっては、各区市町村が地域の特性を踏まえ、自らの地域にふさわしい創造的都市型産業の育成に向け、各種の産業振興施策を盛り込んだ「地域産業振興計画」を策定することとしています。 この度、第1号となる3区市の「地域産業振興計画」の承認を行いましたのでお知らせします。 東京都は計画が開始される平成21年度から3年間にわたり助成を行い、区市町村を支援していきます(最大1億5000万円を助成)。
承認対象区市町村と地域産業振興計画の概要 区市町村
名計画の名称及び内容 大田区 計画期間:平成21〜23年度) 「大田区モノづくり集積再構築計画」
区内立地の支援、新製品・新技術開発助成、創業支援の各事業を通じ、
大田区の強みである基盤技術産業集積の再構築を図ります。
これにより、環境・健康関連産業や航空機・ロボット関連産業の発展に不可欠な
「機械金属分野を中心とする高度基盤技術企業や研究開発型企業」の育成・強化を目指します。練馬区 (計画期間:平成21〜23年度) 「練馬区地域共存型アニメ産業集積活性化計画」
日本アニメ発祥の地であり、国内最大の集積地となっている練馬区において、
アニメ関連企業の国際ビジネス支援、作品制作支援、人材育成支援などを実施し、
練馬区が日本のアニメ産業の中核都市となることを目指します。八王子市 (計画期間:平成21〜23年度) 「八王子市ものづくり産業振興計画」
人材育成、技術力強化、立地支援の各事業を通じ、
「精密・機械・電子機器関連産業」を支える企業の一層の成長を促し、
「世界最先端のものづくり産業を支える試作・研究開発支援地域」を目指します。
フランス アヌシー市では、毎年、世界有数の規模と水準を誇るアヌシー国際アニメ映画祭(6月6日〜11日)を開催しています。アヌシー国際アニメ映画祭見本市(MIFA)(6月8日〜10日)は、この映画祭に併せて開催され、世界50カ国から200ブース、例年 約5000人が訪れる大規模なフィルムマーケットとなっています。 見本市には、練馬区のアニメ関連事業者で組織する「練馬アニメーション協議会」が出展しました。同協議会のブースには、初日からフランスをはじめ、カナダ、韓国、中国など世界各国からバイヤーらが訪れ、アニメ制作について具体的な商談が数多く行われていました。また、日本でアニメ制作の仕事に就きたいといった若手クリエイターからの相談も寄せられました。 練馬アニメーション協議会の石黒竜代表(株式会社動画工房 代表取締役)は、「今年は区内のアニメ制作者の実力を世界の人々に見てもらいます。作画、背景美術、仕上げ作業など、技術力の高さを目の当たりにしてもらえるはずです。そうしたなかで、世界各国の企業と共同制作にも取り組んでいきたい」と意気込みを語りました。練馬区では、新たなビジネスチャンスに向けて、多くのバイヤーやアニメ関係者との実務的な交渉ができることを期待しています。
フランスのアヌシー市では、毎年6月にアニメーション専門の国際映画祭が開催されています。1960年にカンヌ映画祭からアニメーション部門を独立させ、アニメ映画祭としては世界最大規模です。昨年は、50周年という大きな節目の記念映画祭でした。 日本の受賞作品は、1993年「紅の豚」長編作品グランプリ(宮崎駿監督)、1995年「平成狸合戦ぽんぽこ」長編作品グランプリ(高畑勲監督)、2008年「つみきのいえ」アヌシー・クリスタル賞[最高賞グランプリ](加藤久仁生監督)などがあり、「つみきのいえ」は、2009年2月に米国アカデミー賞の短編アニメ映画賞も受賞しています。 今年の映画祭では、東映アニメーションの「SPACE PIRATE-CAPTAIN HARLOCK(宇宙海賊 キャプテンハーロック)」のプロモーション映像が上映され、原作者の松本零士氏ほかの制作関係者が登壇しました。
アニメ産業交流協定は、ジャパンアニメーション発祥の地練馬区と、世界最大のアニメ映画祭が開催されるフランスのアヌシー市およびアヌシー都市圏共同体の間で締結された協定です。 この協定は、2009年(平成21年)4月22日にアヌシー市で取り交わされ、練馬区とアヌシー市のアニメ会社による国際的なビジネス展開のための情報交換や相互協力、アヌシー市クリエイターの日本アニメスタジオ受け入れ、各種イベントや映画祭での連携などが盛り込まれています。 調印式には練馬区長とアヌシー市長が出席。世界的に前例のないアニメを通じた産業交流が誕生しました。 アヌシー市は、フランス東部のアヌシー湖岸に位置するローヌ=アルプ地方の都市で、人口は約5万人。1960年(昭和35年)に、カンヌ映画祭からアニメーション部門が独立し、世界最大規模を誇るアニメーション専門の国際映画祭が開催されるようになりました。
平成21年4月22日午後6時30分(現地時間)、練馬区とフランス・アヌシー市およびアヌシー都市圏共同体はアヌシー市役所内「サロン・デ・マリアージュ」にて、アニメ産業交流協定を締結しました。日本のアニメ発祥の地であり、国内最大のアニメ企業集積を誇る練馬区と、世界最大のアニメ映画祭が開催される国際都市アヌシー市との間で行われるこの産業交流は、アニメを通じた海外の都市間による初めての試みです。
今回の協定に基づき、
(1)両市のアニメ会社による国際的なビジネス展開のための情報交換や相互協力
(2)アヌシーのクリエイターの日本のアニメスタジオへの受け入れ
(3)練馬区とアヌシー市で行われるそれぞれのイベントや映画祭での連携
(4)アニメキャラクターの開発の検討など
を推進・実行していく予定です。