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文化財保護環境での問題例
文化財の保存環境について
後継者減少、原材料入手困難
世界遺産申請の背景
参考文献

文化財とは

祖先がつくり現在に伝えた文化的な遺産であり、過去から現在へ、現在から未来へと遺し遺されていくべき 貴重な人類のメッセージである。

・人類の未来を想像する糧
・文化財保護→広く活用することで、文化創造へ

これらの支援行為=文化財の保存・修理

保存・公開・活用の影響

保存・公開・活用の間には、相互に深く関係していながらも多くの矛盾が存在している。
ベストな保存環境 ≠ 公開環境 という関係性が多くの文化財の状況においてみられる。
その例として、ここでは【白川郷】と【キトラ古墳】を例にあげてみる。
これらの2つの例は一種反対の状況ではあるが、それぞれに保存と活用の環境に矛盾が生じている。

白川郷

岐阜県(飛騨国)内の庄川流域の呼称
(1995年)ユネスコ世界遺産(文化遺産)登録 (白川郷・五箇山の合掌造り集落)

世界遺産登録後、急激に観光客が増加し、それに伴い、多くの問題が発生している。
地域社会の生活と観光地化の進行により、観光客と地域住民の併存が難しくなっているといえる。
【世界遺産登録による利点と欠点 】
(利点)
・遺産の保護ができる ・土地の知名度が上がる ・合掌造りに対する誇りが強まる ・伝統を伝えることができる
(欠点) ・補助金により結いが成立しなくなる ・家屋を思い通りに変えられない
【観光地化による利点と欠点 】
(利点)
・雇用の創出 ・経済発展 ・国際交流ができる
(欠点)
・プライバシーの侵害 ・環境悪化(ゴミ、車の排気ガスなど) ・マナーの悪い観光客 ・過度な観光地化

本来なら遺跡を守るはずの世界遺産指定のはずが、それに伴う観光客の増加や知名度のアップにより、観光地化が進み本来の遺跡本来の姿が脅かされている。世界遺産登録によって経済効果により、より遺跡環境を整える糧のなるはずのものも、このように観光客のマナーや遺跡状態が失われてしまうのならば、遺跡の守り、その価値を広め共有するはずの制度でありながら同時に遺跡本来のあり方を脅かしてしまうという保存と活用の矛盾が生じているのではないか。
(画像出典 : http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:LocMap_of_WH_Shirakawa_and_Gokayama.png)

キトラ古墳

奈良県高市郡明日香村にある円墳
(2000年)国指定史跡→特別史跡指定

キトラ古墳内部の壁画にカビが発生した際に、それまで現状保存の状態でいた古墳内部の保存方法に変化があった。
内部壁画を剥ぎ取るというものである。 その壁画は期間限定で公開され、研究にまわされることとなった。
剥ぎ取りに際しては、それまでの保存状態への批判や、「剥ぎ取り」という遺跡のオリジナルを大きく壊すやり方への講義の声も多数あがった。
今後は
・展示可能な状態にまで壁画を修復→定期的展示へ
・特別展から常設展へ
という流れをふむという。


キトラ古墳はそれまで遺跡内部を現状のまま保存し、小さな盗掘穴から小型カメラを入れて内部の状況を研究する方法がとられていた。しかし、今回遺跡内部でのカビの発生が確認されたことをきっかけに、内部に人が入り、壁画の剥ぎ取りという決断がされた。剥ぎ取りの際には内部は外気にさらされた。剥ぎ取られた壁画の公開は、人々にその価値を【共有】するために公開が行われているが、剥ぎ取り直後の修復未完の状態での公開であった。公開する、ということは博物館の中で照度や湿度を調整し、文化財そのものに大きな負担をかけることになる。
(画像出典 : http://www.nara-np.co.jp/special/kitora/040519.html)

まとめ

【白川郷】【キトラ古墳】それぞれに、保存状態と活用の方法に遺跡本来のあり方にかかわる矛盾があるといえる。 しかし、最初に述べたとおり、文化財は祖先がつくり現在に伝えた文化的な遺産であり、過去から現在へ、現在から未来へと遺し遺されていくべき貴重な人類のメッセージである。 それらは人類に共有されてこそその意味や影響が出るのではないかと考える。 活用されなければ文化財の価値は失われてしまうが、活用によってそれらの状態に負担をかけてしまうという矛盾がここには見られる。
当たり前かもしれないが、ここで重要なのは【活用の中での保存】ということではないだろうか。

【保存】として・後世への文化財保存・文化財環境の考察を
【公開】として・人類への働きかけを
【活用】として・文化財の存在意義(多文化との接触等)を

そのように、【保存・公開・活用】のサイクルの相互作用をコントロールし、それぞれの状況にあった文化財の一番よいあり方を模索していくことが重要であると考える。


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Last Update : 09/07/21
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