文化財の補修とは
●在来と同じ品種・品質の材料を使用することが文化財の価値担保上極めて重要である。
●貴重な国民的財産である文化財を本来の形状で後世に伝えることは,文化財保護行政の根幹をなすものである。
文化財は形あるものであればその姿をいつまでもとどめておくことは不可能である。それらをありのままの形で後世に残すためにはそれらを常に見守り補修を行っていく事が重要である。
しかし文化財の中には伝統工芸品も多くそれらを本来の形で補修する方法そのものも古い方法であり補修の方法の伝承のための後継者の減少、また補修材料となる原材料の入手が困難な場合であるという問題がある。
選定保存技術の選定・認定
後継者がいなければなくなってしまう補修という技術の伝承を残すため、昭和50年の文化財保護法の改正により、【選定保存技術の選定・認定制度の設置】がされている。
その主な概要は以下のとおりである。
●文化財の保存のために欠くことのできない伝統的な技術または技能で保存の措置を講ずる必要があるものを、選定保存技術として選定しその保持者及び保存団体を認定。
●国は、選定保存技術の保護のために自らの記録の作成や伝承者の養成等を行うとともに、保持者・保存団体等が行う技術の錬磨・伝承者養成等の事業に対し必要な援助を行っている。
【選定保存技術の選定・認定状況】(平成20年4月1日現在)
●選定保存技術 : 67件
●保持者 : (件数)47件 (保持者数)51人
●保存団体 : (件数)25件 (保持者数)26団体
選定保存技術の選定並びに保持者及び保存団体の認定の基準
●第一 選定保存技術の選定基準
〔有形文化財等関係〕
一 有形文化財、有形の民俗文化財又は記念物の保存のために欠くことのできない伝統的な技術又は技能のうち修理、復旧、復元、模写、模造等に係るもの(次項において「有形文化財等の修理等の技術等」という。)で保存の措置を講ずる必要のあるもの
二 有形文化財等の修理等の技術等の表現に欠くことのできない材料の生産、製造等又は用具の製作、修理等の技術又は技能で保存の措置を講ずる必要のあるもの
〔無形文化財等関係〕
無形文化財又は無形の民俗文化財の保存のために欠くことのできない伝統的な技術又は技能のうち芸能、芸能の技法若しくは工芸技術又は民俗芸能の表現に欠くことのできない用具の製作、修理等又は材料の生産、製造等の技術又は技能で保存の措置を講ずる必要のあるもの
●第二 選定保存技術の保持者又は保存団体の認定基準
〔保持者〕
選定保存技術に選定される技術又は技能を正しく体得し、かつ、これに精通している者
〔保存団体〕
選定保存技術に選定される技術又は技能を保存することを主たる目的とする団体(財団を含む。)で当該技術又は技能の保存上適当と認められる事業を行うもの
伝統工芸士
【選定保存技術の選定・認定制度の設置】とともに、さらに後継者を残すために【伝統工芸士】という認定制度がある。
【伝統工芸士】
●その産地固有の伝統工芸の保存、技術・技法の研鑽に努力し、その技を後世の代に伝えるという責務を負っている。
●産地伝統工芸士会に加入し、産地における伝統工芸の振興に努めることとなる。
認定制度の主な概要は以下のとおりである。
後継者不足等により低迷している伝統的工芸品産業の需要拡大を狙って1974年(昭和49年)に誕生した制度である。
伝産法第24条第8号に基づいて伝統的工芸品産業振興協会が行う認定試験で認定される。
その他関連組合
●日本伝統工芸士会(昭和56年6月19日設立)
全国の伝統工芸士が一体となり、伝統的技術保持者としての自覚を高め、社会的地位の向上に努めるとともに、親睦と情報交換を行うことにより、伝統的技術・技法の継承・向上を図り、わが国の伝統的工芸品産業の振興に寄与することを目的として、全国伝統工芸士大会や全国伝統工芸士展の開催等の事業活動を行っている。
【参考サイト】
→日本の伝統的工芸品館
→伝統的工芸品づくりの材料・道具ネットワーク・データベース
Last Update : 09/07/21
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